BRAF non-V600E陽性肺がんの臨床的特徴と現行治療の効果が判明
2023/11/08
文:がん+編集部
BRAF non-V600E(V600E以外のBRAF遺伝子変異)陽性肺がんの臨床的特徴が解明されました。BRAF non-V600E陽性肺がんの中には、BRAF V600E陽性肺がんと臨床的に類似したタイプがあり、このタイプの肺がんには、V600E陽性肺がんの分子標的治療が有効である可能性が示されました。
BRAF non-V600E変異の一部の肺がんでも「ダブラフェニブ+トラメチニブ」併用療法が有効な可能性
国立がん研究センターは2023年9月29日、BRAF non-V600E陽性肺がんの臨床的特徴と現行治療の効果を明らかにしたことを発表しました。
BRAF遺伝子変異は非小細胞肺がんの約2%で起こるまれな変異で、このうちV600Eという変異がある肺がんに対しては有効な分子標的薬が承認されています。しかし、V600E以外のBRAF遺伝子変異(BRAF non-V600E)がある肺がんに対しては分子標的治療の開発が進んでいませんでした。
研究グループは、肺がん遺伝子スクリーニング基盤「LC-SCRUM-Asia」の大規模データベースを用いて、世界最大規模のBRAF遺伝子変異陽性肺がんを対象とした研究を実施しました。LC-SCRUM-Asiaの遺伝子解析で同定された計380個のBRAF遺伝子変異を、変異の種類によってクラス1~3に分類。特にBRAF non-V600E変異であるクラス2とクラス3の変異がある肺がんについて、臨床的特徴や現行治療の効果を検討しました。その結果、クラス2と3の変異がある肺がんでは、クラス1の変異(V600E)がある患者さんと比較して、喫煙者に多いこと、同時に共存する遺伝子変異としてRAS遺伝子ファミリーの変異とTP53遺伝子の変異が多いこと、化学療法に対する効果が乏しいことが明らかになりました。
さらに、クラス2の変異の特徴からクラス2aと2bに分類。クラス2aの変異がある肺がんでは、BRAF V600E陽性肺がんと臨床的特徴が類似しており、BRAF V600E陽性肺がんに対して承認されている分子標的治療「ダブラフェニブ+トラメチニブ」併用療法が有効である可能性が示されました。
同研究センターは展望として、次のように述べています。
「本研究はこれまで明らかではなかったBRAF non-V600E陽性肺がんの臨床的特徴や生物学的特徴を明らかにした世界最大規模の研究です。BRAF遺伝子変異の3つの亜集団をさらに細分化し、V600E陽性肺がんに類似した集団を同定したことは、今後治療開発を行っていく上で重要な知見であると考えます。本研究成果を用いてBRAF non-V600E変異を有する患者さんに対する治療開発が進むことが期待されます」