「膵がん患者夫婦の会」膵臓がん治療から、それぞれの想いに寄り添った支援を

ひかりさん
膵がん患者夫婦の会 ひかりさん

2024.1 取材・文 がんプラス編集部

 「膵がん患者夫婦の会」は、2022年9月に福岡市内を拠点に活動を始めた会です。膵臓がんの患者さん・家族・遺族らが集まる会を対面式で開催するほか、オンラインでの交流会も開催しています。この会を管理するひかりさんは、LINEのオープンチャットでも膵臓がん関連のコミュニティで管理人をしています。立ち上げの経緯から現在に至るまで、これからについてお話を伺いました。

治療や病院情報、生活の質を考える話も

対面患者会
福岡での対面式患者会の様子

 膵がん患者夫婦の会は、福岡で定期的に対面形式での患者会を行うほか、ZOOMを用いたオンラインサロンも開催しています。参加者は30~80代の患者さんで、ご本人だけでなくご家族も一緒に参加される方も多くおられます。

 立ち上げ当初はごく数名での開催が続きましたが、自治体の後援を受け、チラシやホームページ、SNSで発信することで少しずつ参加者が増え、最近では10名を超える日も増えてきました。患者会では、治療の話、日常生活の話、かかりつけ病院についての情報交換をメインに行っていますが、外来がん治療専門薬剤師の方に協力いただき「膵臓がんの抗がん剤治療」と題した講演会も開催しました。

講演会
2023年9月、運営に関わる荒木弘さんによる
がんの治療薬に関する講演

 患者会では、治療の辛さや精神的な不安、さらには家族の気持ちなど、誰に相談したら良いか分からないお悩みを参加者で受けとめ意見交換しています。日頃は家族間でも話しにくい内容でも同じ病気を抱えた仲間だからこそ敷居を下げて話すことができます。

 「がん対策推進基本計画」において、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が重点的に取り組むべき課題として位置付けられていますが、実際には終末期のイメージを強く持たれる方がまだまだ多く、いざケアを受けたいと思っても順番待ちで直ぐには受けられない方を多く見てきました。また制度自体がよくわからないという声も多く聞きます。多くの患者会は治療に関するお話が中心ですが、私たちの患者会は治療と並行して心のケア、さらには治療を中断した場合の在宅医療の話についてもざっくばらんに話せる場であったらと思っています。

2人の膵臓がんの家族を見送った遺族という立場で

 2018年5月に75歳の実母が膵臓がんと診断されました。母は積極的治療を望まず旅行や仕事に打ち込み、母らしく過ごし自宅から安らかに旅立ちました。その4年後、2022年3月に47歳の夫が福岡市内のがん専門病院で膵臓がんと診断されました。治療を始めましたが、コロナ禍のため待合室で会話もできない状態でした。その病院には当時全がん種を対象とした患者会のオンライン開催はあったものの、インターネットが苦手な夫は「対面で膵臓がんの患者さんに会いたい、同じ病気の人と交流したい」という望みを持っており、九州内で膵臓がん患者会を見つけることが出来なかったことから、思い切って私たちで患者会を立ち上げることにしました。

 患者である夫にとって、対面で同じ境遇の方と実際に交流することは本当に大切な時間となりました。そして私自身も皆さんから力をいただき、寄り添い続けることができました。また、患者・家族にとって治療と向き合う上で最も大切なのは「心の平安」であり、それを維持していく為に皆さんと「つながり」を持つ、このような場はなくてはならないものだと痛感しています。開設から半年後に旅立った夫が残したこの患者会を続け、膵臓がんに関わる方が集う場所であり続けたいと感じ、そして何より私はそこで力をいただいています。

入院患者さんも参加、本音が詰まったLINEのオープンチャット

 「膵がん患者夫婦の会」を始める前から、膵臓がん関連のLINEのオープンチャットの管理人を務めています。前管理人から引き継ぎ、現在は新しく部屋を3つ追加し「患者本人の部屋」(46人)「家族の部屋」(167人)「緩和ケア」(37人)「遺族の部屋」(33人)(※2024年1月現在)と4つのトークルームの管理人をしています。

 コロナ禍でオンライン開催の講演やイベントが増えたとはいえ、患者会に顔出しでの参加が難しい方や入院中の患者さんの参加は少ない印象です。一方、このLINEオープンチャットでは、通常のチャットメッセージでのやり取り以外にも、声だけの交流会であるライブトークを時々開催していて、入院中の病室やご自宅で「患者会に行けない、患者会に行く勇気がない」方でも、簡単なLINEの操作・予約不要・ニックネームで同じような境遇の仲間と交流できます。

 利用者からは、「精神的に追い詰められているときに、みんなが寄り添ってくれることに、救われている」といった声も聞かれています。このオープンチャットには、みなさんの本音が詰まっています。状況や考え方はさまざまですが、皆さんのお話を伺い、自分の気持ちを話すことで、それぞれに新しい気付きがあるように感じています。

膵臓がん患者の家族としての経験を生かして

 膵臓がん患者さんに寄りそった経験者同士で話をしていると、「何かしてあげたいが何をしたら良いか分からない」「本人の希望することを叶えてあげたい」という声が聞かれます。治療のこと、在宅医療のこと、生活のことなど一緒に語りませんか?

 家族と一緒に参加し、第三者を交えて話すことで自分の意外な一面に気付け、想いをすり合わせることで、これまで家族にも伝えることが出来なかった気持ちを素直に伝えられることもあります。病になると、患者と家族は社会と切り離された離れ小島にいるような感覚になることもありますが、ここは同じ仲間がいて安心して語れる場所です。

 私は、昨年ピアサポーター養成講座を受講し、さらにグリーフケアに関する資格を取得しました。これからもご参加いただける方に寄り添える会を目指し続けてまいります。

膵がん患者夫婦の会 外部リンク

主ながん種
膵臓がん
地域
全国(現地開催は主に福岡市)
連絡先
hukuoka.kanjyakai@gmail.com
活動内容
2022年9月に福岡で設立。膵臓がんご本人とご家族・ご遺族・サポートする方々が参加する語らいの会を定期的に対面形式で開催しています。このほか、ZOOMによるオンラインでの交流会「オリーブ」も開催。同会の管理人のひかりさんはLINEオープンチャット上の膵臓がん関連のコミュニティでも管理人を務めています。