「みんなのレモネードの会」、おしゃべりを楽しむ「学校の放課後」のような居場所を

2025.3 取材・文 がん+編集部
みんなのレモネードの会(以下、みんレモ)では、小児がんの患児、きょうだい児を含むご家族を対象に、さまざまな交流支援活動を行っています。小児がん支援の「レモネードスタンド」を患児家族仲間と開催したことがきっかけで、2016年に任意団体として会を設立。2020年4月に一般社団法人化し、活動の幅が広がってきています。代表理事の榮島佳子さんと、小児脳腫瘍の患児である高校2年生の息子の四郎さんにお話をうかがいました。
「読書部」「犬部」などの部活動や交流会をオンラインで開催

四郎さん:みんレモにはさまざまな交流の場がありますが、特徴的なのは、オンラインで行っている学校の「部活動」のような活動です。好きな本を持ち寄って紹介しあう「読書部」、セラピー犬や飼い犬も一緒に画面越しで交流する「犬部」のほか、「UNO部」「夜のラジオ体操部」「おしゃべり部」(保護者対象)などがあります。関心のある部活に、参加できるときだけ、自宅療養中の方、病棟にいる方も(病院が大丈夫な場合は)参加しています。みんなからのリクエストに応じて部活の種類は増えてきています。
このほか、毎週開催している「みんレモオンライン自習室」や、月1回の「ティーンエイジャーおしゃべり部」(中学生以上~22歳位までの小児がん患児・経験者が対象)などがあり、このおしゃべり部では大人には秘密の内容を子ども同士で話したりしています。
佳子さん:治療中の方だけでなく、治療後の後遺症や合併症がある場合や、免疫機能がなかなか改善しないお子さんの場合、通学・通園が困難なことがあります。中には、みんなでたわいのない話を楽しむ、いわゆる「学校の放課後」を経験したことがないお子さんもいます。そういう状況の患児や、きょうだい児、時には保護者が集い、一緒にいろいろな活動を楽しみながら、つながれる場となっています。
また、部活動の一部は、10代以上の小児がん患児が司会進行や活動報告を作る役割を担っています。疲れやすかったり、高次機能障害を持つ子もいますので、保護者がサポートしつつ、無理のない範囲でやってもらい、少しずつ経験を積んで学んでもらえたらと後押ししています。
みんレモ全体では、昨年は部活動やイベントなどを77回開催し、のべ600組の患児・ご家族が参加されました。がん種はさまざまですが、白血病、脳腫瘍、神経芽腫など、小児がんで多いがん種の方がいらっしゃいます。北は北海道から南は沖縄まで、未就学児から成人した人までいるのですが、それでもみんな仲良く話しをしていますよ。
治療経過をつづったブログを通じた交流がはじめの一歩
佳子さん:四郎さんは、2012年の初夏、4歳の時に、脳の松果体の胚細胞腫瘍(脳腫瘍)が判明し、手術、化学療法、放射線療法を受け、同年9月に退院しました。手術を受ける約1年前から不調が現れていたのですが、総合病院や専門病院でもその原因の特定に至らず、脳外科医として著名な先生を頼って札幌までセカンドオピニオンも受けに行き、ようやく治療方針が見えてきて、診断に至ったという流れでした。
診断前から治療に至るまで、わからないこと、不安だったことがたくさんありました。自分や息子の記録として、また、同じ胚細胞腫瘍、小児脳腫瘍や小児がんと闘っている方々の参考になったり、少しでいいから希望になってもらえたらとの思いから、ブログをつづることにしました。いつしかそのブログには同じ境遇の方々からコメントがつくようになり、交流するようになり、そして2016年、四郎さんが小学3年生の時、交流メンバーを中心に、任意団体として「レモネードの会」を設立。その後、一般社団法人化しました。

四郎さん:母が読み聞かせてくれた1冊の絵本がきっかけで、会の名前は「レモネードの会」になりました。その本は、「ちっちゃなアレックスと夢のレモネード屋さん」という本で、小児がん支援のために「レモネードスタンド」を開くというお話です。
佳子さん:病気のことを隠すつもりはなかったので、この本を紹介しました。「レモネードスタンドやってみたい?」と四郎さんに聞いてみたところ、「やってみたい」という返事が。それで地域のイベントで実際やってみることになったのが2016年の冬でした。現在もイベントなどでレモネードスタンドを行っています。
活動への参加が、新たな道に進むきっかけに
四郎さん:僕はみんレモでの活動を通じて、同じ病気で、いろいろな悩みを持つ人たちと悩みを共有できて、たくさんの仲間とつながることができて、とても嬉しく思っています。また、この活動を通じて感じたことや気づきについて、大学に進学して学びたいと考えています。
佳子さん:活動に関わったお子さんからは、「この活動があることですごく救われた」と話を聞いたことがあります。退院後に体力が回復せず、自宅にいる時間が長く、「居場所がない」と感じ、不安でいっぱいだったそうです。今はある部活の司会進行を担当してくださっていて、今後、新たな道に進むことになっています。
また、みんレモで司会進行の経験した別のお子さんからは、就職活動にも好影響だったと伺ったことがあります。面接の際に活動について写真つきで紹介したところ、面接担当者がとても興味を示してくださったそうです。新たな一歩につながるきっかけにもなっているようです。来年度は、司会進行などを担ってくれる小児がん患児の活動を増やしていけたらと考えています。
自分のペースで参加して、楽しんでほしい

四郎さん:新しい取り組みとして、みんレモ事務所(横浜市)の一角に、常設の図書スペース「みんなのワクワク図書館」をつくりました。僕が館長となって、オンラインで絵本づくりを体験してもらうイベントも計画しています。本は読書部のみんなで選んだもので、絵本、漫画などがあります。小児がんを経験した僕が伝えたいことを全部かいた絵本「ぼくはレモネードやさん」(2019年・生活の医療社)も置いてあります。
みんレモは、自分のペースで自分の好きな時に参加できて、たくさん悩みを共有できたり、ゲームをしたり本を紹介しあったりして、楽しく過ごせる場所です。ぜひお気軽にいらしてください。
がん種 | 小児がん |
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地域 | 全国(対面での活動は主に神奈川県横浜市周辺) |
連絡先 | https://www.minnanolemonade.com/お問い合わせ/ |
活動内容 | 小児がん患児とその家族、きょうだい児を対象とした交流イベントの企画、開催。小児がん啓発のためのレモネードの販売、啓発のための印刷物やグッズ等の企画、制作及び販売、講演活動なども行っている。 |