支えあう会「α」 がん体験者・家族・遺族が集い「分かち合う」

野田真由美さん
支えあう会「α」 副理事長 野田真由美さん

2025.4 取材・文 がん+編集部

 支えあう会「α」は、1994年から千葉県を中心に活動しているがん患者団体です。がん種を問わずすべてのがん患者さん、ご家族、またご遺族も対象に交流の場を提供。専門の講師を招いての勉強会も開催しています。同会の副理事長を務める野田真由美さんにお話を伺いました。

交流会、勉強会を通じて、悩みや情報を分かち合う

サロンの様子
「α」サロンの様子

 私たちがメインとしている活動の1つが、毎月2回開催の「α」サロンという交流会です。対面式とオンラインのみの2回で、がん患者さんご本人、ご家族、ご遺族、さまざまな立場の方が参加しています。乳がん、肺がんなど、がんの部位別に開催する日や、ご遺族向けの日など、事前にテーマを告知して、希望者を募る流れになっています。1度に7~8人の参加者が集まり、情報交換をしたりしています。

 また、専門の講師を招いてがんに関する正確で新しい情報をお伝えする「連続講座」を年に2~3回開催しています。最近は「がんゲノム医療」や「がん治療と栄養」といったテーマで実施しました。この連続講座では、一方的に情報提供をするだけでなく、登壇した講師と参加者が直接膝を交えてフリートークをする時間も設けており、医療者としっかりと対話することも大切にしています。参加者、講師として来てくださった医療者のみなさまからは、「良い時間を過ごせた」と感想をいただくことも多いです。このほか、会報誌の発行、講師派遣なども行っています。

 対面式のイベントは主に千葉県千葉市で開催しているので、千葉県内や周辺都市からの参加者が多いのですが、オンライン開催の時には県外から参加される方もいらっしゃいます。また、会員制の形式をとっていますが、会員でない方も参加可能で、実際に多くの方が参加しています。参加者の年代としては、50・60代以上の方が多くなっています。

仲間同士での支え合いの会としてスタート

 当会は、1994年、千葉大学医学部附属病院に看護師として勤めていた土橋律子さんが、30代でがんに罹患したことがきっかけで設立されました。入院中は医療者のさまざまなサポートが受けられるものの、退院して社会に戻ると、がん患者さんが受けられるサポートはほとんどないという状況。そんな中で、仲間同士の支え合いが自分にとっても大きな力となり、その重要性を実感したことから、自ら声をかけて患者会を立ち上げたと聞いています。

 私自身は、1998年、40歳の時に乳がんが見つかり、治療を受けました。ほぼ同時期、同居する父親に膵臓がんが見つかったため、自分自身は手術・ホルモン療法といった乳がんの治療を受け、家庭ではキーパーソンとして父親の闘病を支えるという生活を送りました。後に遺族となり、患者本人であり遺族でもあるという立場を経験しました。

 周囲には40代で乳がんを経験した人は見当たらず、また、がん患者の家族の様子を知る機会もなく、孤独でした。そこで、インターネットで同じような経験をした仲間を探し始めました。それから、独学でHTMLを学び、自分や父の闘病記を掲載したホームページを公開し始めました。同じような境遇の方や医療従事者とのつながりが生まれ、やがて、私の取り組みを知った土橋さんに声をかけられ、支えあう会「α」の活動に携わるようになりました。

自分の不安について安心して表明できる場所

 「α」サロンに参加された方からは、いろいろな声が届いています。

 初参加の方で、どこまで話して良いのかと最初は戸惑っておられる方が、話が進むにつれ、「私もその時、同じ思いだった」といった共感が生まれ、最終的には「ご自身のことを率直に話せてよかった」とおっしゃることは多いです。

 また、一度がんを経験した方の中には、定期検査が近づいてくると不安を感じられる方もおられます。そうした方から、「このサロンでは、そうした不安を安心して打ち明けることができる」という声も聞かれます。

 がん治療が一旦落ち着いたことで参加を中断していた方が、再発や別の部位にがんが見つかったことなどをきっかけに再び参加されるようになることもあります。そのような状況の方からは「居場所があってよかった」「このサロンがあってよかった」という声も寄せられています。

 現在、当会の運営スタッフは全員が20年以上関わっているメンバーで、中には医療従事者もいます。ここでの活動をきっかけに、がんに関連する協議会や自治体での委員などを務めるようになったスタッフもいます。これまでの活動を通して、たくさんの患者さんやご家族のさまざまなお悩みを聴かせていただきました。また、アップデートされていくがんに関わるさまざまな情報について勉強もしていますので、患者さんがどのような状況に置かれているかを、ある程度正確に理解できていると考えています。難しい医療の言葉について「通訳的な」お手伝いをさせていただくこともありますが、「こうしたサポートもありがたい」と、感謝を伝えてくださる方もいました。

がん患者仲間としてこれからも「分かち合う」ために

 スタッフは現在、全員が50代から60代で構成されています。いろいろな経験を踏まえてご相談をお受けできるという点は当会の強みである一方、世代交代が進んでいないことは課題だと感じています。特に、新型コロナ流行期に会の活動が大幅に制限されて以後、参加人数が減少傾向にあります。そのため、他の患者会とのコラボレーションによるイベントを計画するなど、新しいやり方も検討していきたいと考えています。1人でも「ここがあってよかった」と頼ってくださる人がいる限り、がん患者仲間の1人として、お互いを支え合い、分かち合う場であり続けたいと思います。

NPO法人支えあう会「α」 外部リンク

がん種 全がん
地域 全国(対面での活動は主に千葉県千葉市周辺)
連絡先 https://www.alpha-chiba.com/contact/
活動内容 同じがん種の方を中心とした集まり、ご遺族の集まり、部位や立場を問わない集まりなど、テーマごとに開催する「α」サロン(月2回)や、専門の医療従事者を招いての講座開催などを行っている。