乳がん罹患リスク、座っている時間が1日7時間以上だと高い

2024/01/31

文:がん+編集部

 座っている時間が1日7時間以上だと乳がんの罹患リスクが高いことが、日本人を対象とした大規模研究で判明しました。

乳がん予防には、運動をまとめて行うよりこまめに行うことが効果的

 京都府立医科大学は2023年12月5日、日本人を対象とした大規模調査をまとめた論文「7時間以上の座位時間と乳がん罹患リスク」が、Cancer Scienceに掲載されたことを発表しました。同大大学院医学研究科内分泌・乳腺外科学の富田仁美フューチャーステップ研究員らの研究グループによるものです。

 長時間の座位は健康に悪影響を与えることが知られており、WHO身体活動・座位行動ガイドラインでも「健康を害する行動」と位置付けられています。また、座位時間とがん罹患の関連についても指摘され始めていますが、1日の座位時間と乳がん罹患の関係を示した報告はありませんでした。

 研究グループは、3万6,000人以上の日本人女性を9.4年間(中央値)追跡したデータを用いて、1日の座位時間と乳がん罹患の関係を分析。さらに、余暇の運動量として代謝当量、余暇の運動頻度、1日の歩行時間と座位時間を掛け合わせた影響の分析を行いました。

 その結果、1日当たりの座位時間が7時間未満のグループと比較して、7時間以上のグループでは乳がん罹患リスクが36%高くなっていました。しかし、座る時間が長くなるほど乳がんの罹患リスクが上がり続けるわけではありませんでした。次に、身体活動に関する項目と座位時間と乳がん罹患の関係を掛け合わせて解析したところ、1日当たりの座位時間が7時間以上のグループは、余暇運動(1日1時間以上)、余暇に週3回以上の運動、1日1時間以上の歩行などのいずれの身体活動でも、7時間未満のグループより、乳がん罹患リスクが高い結果となりました。

 これらのことから、乳がん予防には、運動をまとめて行うより、こまめに行うことが効果的と考えられます。

 研究グループは今後の展開と社会へのアピールポイントとして、次のように述べています。

 「コロナ禍からのテレワーク普及により、今後も在宅業務による家庭内デスクワークの継続導入が予測されます。在宅業務は、通勤時間が削減されるため、運動不足に加え、座っている時間の延長につながる可能性があります。また今回の結果より、普段の座りっぱなしによる運動不足を解消するために、余暇の時間にまとめて運動することよりも、普段から座位時間を短縮し、こまめに運動を取り入れることが効果的であると考えられます。座りっぱなしに気がついたら立ち上がってストレッチをしてみる、普段の移動にエスカレーターではなく階段を使ってみる、隙間時間に体操をしてみるなど、日々の小さな心がけで健康を維持していきましょう」