「進行再発乳がんへの有効性を示した世界初のAKT阻害薬」と題したメディアセミナーを開催

2024/07/02

文:がん+編集部

 AKT阻害薬カピバセルチブ(製品名:トルカプ)の発売にあたり「進行再発乳がんへの有効性を示した世界初のAKT阻害薬」と題したメディアセミナーが開催されました。

トルカプ、PIK3CA、AKT1、PTEN遺伝子変異があるHR陽性HER2陰性の手術切除不能・再発乳がんの二次治療薬として発売

 アストラゼネカ株式会社は2024年6月21日、「進行再発乳がんへの有効性を示した世界初のAKT阻害薬」と題したメディアセミナーを開催しました。

 同社のAKT阻害薬カピバセルチブは、「内分泌療法後に増悪したPIK3CA、AKT1またはPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術切除不能または再発乳がん」の効能・効果でフルベストラント(製品名:フェソロデックス)との併用療法が2024年3月26日に国内承認され、同5月22日に発売されました。

 今回のメディアセミナーでは、がん研究会有明病院乳腺センターの上野貴之センター長により「HR+HER2- 転移・再発乳癌治療の新たな一手~世界初のAKT阻害薬カピバセルチブとは?~」と題した講演が行われました。

 まず、ホルモン受容体陽性HER2陰性転移・再発乳がんに対するホルモン療法とその課題に関して説明が行われました。

 「乳癌診療ガイドライン2022年版(2024年3月WEB改訂版)では、閉経後ホルモン受容体陽性HER2陰性転移・再発乳がんに対する一次内分泌療法としてアロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬が強く推奨されています。しかし、同療法を受けた後の二次治療として、最適な治療法は確立されていません。ホルモン陽性の乳がんでは、エストロゲンが増殖因子となっているため、エストロゲンを抑制するためにホルモン療法が行われますが、ホルモン療法耐性が課題となっています」

 また、一次ホルモン療法の耐性機序に関する説明が行われました。

 「ホルモン療法+CDK4/6阻害薬耐性の1つにPI3K-AKT-PTEN経路の活性化があります。PIK3CA、AKT、PTENの遺伝子変化(活性型もしくは機能喪失型)がPI3K-AKT-PTEN経路の活性化に関わっているため、PIK3CA、AKT、PTENの遺伝子変化を調べるためのコンパニオン診断が必要となります」

 さらに、二次ホルモン療法としてカピバセルチブを評価したCAPItello-291試験の結果とともに、治療継続のために必要な対応に関して述べられました。

 「ホルモン陽性HER2陰性手術不能・再発乳がん患者さん708人(日本人78人含む)を対象に、カピバセルチブ+フルベストラントとプラセボ+フルベストラントを比較したCAPItello-291試験では、PIK3CA、AKT1、PTEN 遺伝子変化が1つ以上認められる患者グループにおいて、無増悪生存期間の有効性が認められました。安全性に関しては、下痢・発疹・耐糖能障害などの有害事象が早期に起こる可能性があるため、あらかじめ患者さんに説明した上で、有害事象に対応できるような体制を整えることが大切です」