新たに多発性骨髄腫と診断された患者さんを対象にダラザレックスを評価した3つの臨床試験の結果を発表

2024/07/23

文:がん+編集部

 新たに多発性骨髄腫と診断された移植適応・非適応の患者さんを対象に、ダラツムマブ(製品名:ダラザレックス)を評価した3つの臨床試験(PERSEUS試験、MAIA試験、CASSIOPEIA試験)の結果を発表。予後の改善が認められました。

ダラザレックスレジメン、新たに多発性骨髄腫と診断された移植適応・移植非適応患者さんの予後を有意に改善

 ジョンソン・エンド・ジョンソンは2024年6月3日、3つの臨床試験(PERSEUS試験、MAIA試験、CASSIOPEIA試験)の結果を発表しました。

 PERSEUS試験は、新たに多発性骨髄腫と診断され、移植が適応となる患者さんを対象に、「ダラツムマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ+ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(D-VRd療法)」と自家造血幹細胞移植(ASCT)に続く「ダラツムマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ+レナリドミド(D-R療法)」維持療法と、「ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(VRd療法)」とASCTに続くレナリドミド維持療法を比較した第3相試験です。主要評価項目は無増悪生存期間、副次評価項目は完全奏効以上の割合、全体的な微小残存病変陰性率、全生存期間などでした。

 解析の結果、D-VRd療法はVRdと比較してより深い奏効と高いMRD陰性率が10-5および10-6の両レベルで経時的に認められました。治療終了時点の完全奏効率もより高く、地固め療法終了時点でD-VRd療法は44.5%、VRd療法は34.7%で、維持療法終了時点でそれぞれ87.9%と70.1%でした。

 また、D-VRd療法では、10-6レベルのMRD陰性率は経時的に増加し、VRd療法よりも一貫して高く、12か月時点でそれぞれ43.9%と20.9%、24か月時点でそれぞれ57.7%と27.4%、36か月時点でそれぞれ63.9%と30.8%でした。

 さらに、D-VRd療法では、10-6レベルのMRD陰性率は12か月以上にわたりVRd療法よりも高く、それぞれ47.3%と18.6%でした。48か月時点の無増悪生存率は、D-VRd療法が84.3%、VRd療法が67.7%でした。

 MAIA試験は、新たに多発性骨髄腫と診断され、大量化学療法および自家造血幹細胞移植が非適応の患者さん737人を対象に、「ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(D-Rd療法)」と「レナリドミド+デキサメタゾン(Rd療法)」を比較した第3相試験です。主要評価項目は無増悪生存期間、副次的評価項目は微小残存病変陰性率、全奏効率、全生存期間などでした。

 解析の結果、D-Rd療法はRd療法と比較して死亡リスクを33%低減。全生存期間の中央値は、D-Rd療法90.3か月、Rd療法64.1か月でした。

 CASSIOPEIA試験は、新たに多発性骨髄腫と診断され未治療で症状がありかつ大量化学療法および自家造血幹細胞移植適応の患者さん1,085人を対象とした第3相試験です。この試験は2つのパートで構成され、最初のパートでは導入、地固め療法として「ダラツムマブ+ボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン(D-VTd療法)」と「ボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン(VTd療法)」を比較、パート2では8週ごとのダラツムマブ維持療法と経過観察を比較しました。主要評価項目は完全奏効率、維持療法後の無増悪生存期間、主な副次的評価項目は無増悪生存期間、病勢進行までの期間、全生存期間などでした。

 6年を超える追跡調査の結果、ダラツムマブによる移植後維持療法は、進行または死亡のリスクを経過観察に比べて51%低減。無増悪生存期間の中央値は経過観察下では4年未満(45.8か月)であったのに対し、ダラツムマブでは6年時点で未達でした。

 Cancer Center Clínica Universidad de NavarraのDepartment of HematologyのPaula Rodriguez-Otero医師は、次のように述べています。

 「MRD陰性は、多発性骨髄腫患者さんの長期的な無増悪生存期間を予測する上で重要な指標です。奏効の深さの割合と、MRD陰性持続率が、ダラザレックスをベースとするレジメンでより高かったという結果は、D-VRd+D-R維持療法が、新たに多発性骨髄腫と診断された移植適応患者さんの治療におけるパラダイムシフトをもたらし、機能的治癒の可能性を高めるものであることを強調しています」

 同社のInnovative Medicineの多発性骨髄腫領域のDisease Area Leaderで、Vice PresidentでもあるJordan Schecter医師は、次のように述べています。

 「MAIA試験において全生存期間の中央値7.5年が示されたことで、移植非適応におけるフロントライン治療のベース薬としてのダラザレックスの有効性が明らかになりました。ダラザレックスは、新たに多発性骨髄腫と診断された患者さんを対象とした3つのすべての試験において、全生存期間の延長を示したことから、標準治療としてのダラザレックスの重要性を裏付けるものとなりました。ダラザレックスをベースとする4剤併用療法および3剤併用療法は、新たに多発性骨髄腫と診断された移植適応および移植非適応患者さんの予後を改善しています」