AR陽性の唾液腺がんを対象に「アーリーダ+ゴセレリン」を評価したYATAGARASU試験の結果を発表

2024/09/10

文:がん+編集部

 アンドロゲン受容体(AR)陽性の唾液腺がんを対象に「アパルタミド(製品名:アーリーダ)+ゴセレリン」を評価したYATAGARASU試験の結果を発表。25%の患者さんで奏効し、50%の患者さんで臨床的に有用な効果が示されました。

「アーリーダ+ゴセレリン」、全奏効率25%、臨床的有用率50%

 国立がん研究センターは2024年8月5日、YATAGARASU試験の結果が米国科学雑誌「Clinical Cancer Research」に掲載されたことを発表しました。

 YATAGARASU試験は、AR陽性の切除不能または再発転移性の唾液腺がん患者さんを対象に、「アパルタミド+ゴセレリン」の有効性と安全性を評価した第2相試験です。主要評価項目は全奏効率、副次的評価項目は臨床的有用率、病勢コントロール率、無増悪生存期間、全生存期間、奏効到達期間、奏効期間、有害事象数、薬物動態などでした。

 試験の結果、25%の患者さんで奏効が認められ、50%の患者さんで臨床的に有用な効果(半年以上の治療効果の持続、または奏効あり)が示されました。また、観察期間33.1か月(中央値)の解析では、無増悪生存期間の中央値は7.5か月、全生存期間の中央値は未到達、2年生存割合は70.8%でした。さらに、腫瘍組織におけるAR発現割合が70%以上かつ全身治療が行われていない患者さんでは、11人中6人(54.5%)に奏効が認められ、無増悪生存期間の中央値は9か月、全生存期間の中央値は未到達、2年生存割合は81.8%でした。

 さらに、通常ARが強く発現し、悪性度の高い組織型の唾液腺導管がんに着目し、抗アンドロゲン療法の効果と関連するバイオマーカーについての研究が行われました。その結果、遺伝子パネル検査でMYCやRAD21という遺伝子の増幅が検出された患者さんにおける抗アンドロゲン療法の効果が乏しいという結果が示されました。また、一部の患者さんの治療終了時の血液検体では上記の遺伝子増幅が検出されていたことから、これらの遺伝子異常が抗アンドロゲン療法の治療抵抗性に関わっている可能性が示唆されました。

 同研究センターは展望として、次のように述べています。

 「本研究の結果、AR陽性唾液腺がんに対して新規抗アンドロゲン療法を投与する際に、腫瘍検体の検討により、高い効果が予測される患者さんが同定される可能性が示唆されました。本研究で得られた知見は、2024年2月から日本で使用可能となった抗アンドロゲン療法(ビカルタミド+リュープロレリン)を実施する際の治療適応の検討、そして今後実施されるAR陽性唾液腺がんを対象とした抗アンドロゲン療法の治療開発に役立つことが期待されます」