【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年5月12日)

2025/05/12

文:がん+編集部

進行膵臓がん、腫瘍マーカーと遺伝子タイプを組み合わせた新たな予後指標モデルの開発に成功

 名古屋大学は2025年4月30日、進行膵臓がんに適応しうる新たな予後指標モデルを開発したことを発表しました。

 膵臓がんの治療では適切な時期の手術が重要ですが、腫瘍マーカー(CA19-9、DUPAN-2)には個人差があり評価が困難でした。

 研究グループは、遺伝子(FUT2、FUT3)タイプと腫瘍マーカーの関係を解析し、マーカー値はがんの進行度よりも遺伝子タイプによる違いが大きいことを発見。これらを組み合わせた新たな予後指標モデルを開発したところ、従来の腫瘍マーカーの正常値だけに頼った指標と比較して、同モデルの生存率の予測性能は優れており、より正確な生存率を予測し得ることが明らかになりました。

 今後はこの遺伝子腫瘍マーカーモデルに沿って、手術の実施を判断することで、メリットの少ない手術の回避や、「手術できない」と見過ごされてきた患者さんの一部に手術を提案できることが期待されます。

エンハーツ、HER2陽性の複数の固形がんの治療薬として国内申請

 第一三共株式会社は2025年4月24日、トラスツズマブ デルクステカン(製品名:エンハーツ)をHER2陽性の進行・再発の固形がん治療薬として国内申請したことを発表しました。今回の申請は、以下4つの第2相臨床試験の結果に基づくものです。

  • HERALD試験:HER2遺伝子増幅が認められた固形がん(医師主導治験
  • DESTINY-PanTumor02試験:前治療歴のあるHER2タンパク質発現の進行性固形がん
  • DESTINY-CRC02試験:HER2陽性の切除不能な進行・再発大腸がん
  • DESTINY-Lung01試験:HER2遺伝子変異またはHER2タンパク質過剰発現の切除不能・転移性非小細胞肺がん

非神経内分泌タイプの小細胞肺がん、IGF1R阻害薬が有効な可能性

 慶應義塾大学は2025年5月1日、非神経内分泌タイプの小細胞肺がんが、インスリン様増殖因子「IGF-1」に強く依存していること、IGF1R阻害薬が新たな治療薬の1つとして有効である可能性を発見したことを発表しました。

 今回の研究では、33人の小細胞肺がん患者さんの組織から40種類以上の小細胞肺がんオルガノイドを樹立。小細胞肺がんは遺伝子発現パターンから4つのタイプに分類されますが、そのうち約3割にあたる非神経内分泌タイプの小細胞肺がんでは、IGF-1による刺激で増殖することを明らかにしました。また、動物モデルを用いた実験により、IGF1R阻害薬による治療が、これらのタイプの小細胞肺がん治療に有効であることを見出しました。研究成果は、有効な治療薬が限られる小細胞肺がんにおいて、新たな治療法開発につながると期待されます。