【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年5月19日)
2025/05/19
文:がん+編集部
保険診療によるがん遺伝子パネル検査の登録患者数が10万人を突破
国立がん研究センターは2025年5月8日、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録された患者さんの総数が2025年3月末時点で10万人を超えたことを発表しました。
がん遺伝子パネル検査が保険診療で開始されてから6年を迎えようとしており、遺伝子変異に基づいたがんゲノム医療が広く行われるようになってきました。
C-CATでは、検査を受けられた患者さんの遺伝子変異の情報や臨床情報をもとに、治療の選択に役立つ情報をC-CAT調査結果として医療機関に提供することで、がん診療の支援を行っています。また、患者さんの同意のもとC-CATに集約された情報は、日本のがんゲノム医療の実態の把握を可能とし、今後の日本のがんゲノム医療をよりよくしていくための基盤的な情報としても用いられています。
製薬会社やアカデミアにC-CATのデータが活用されることで、日本人のがんの特徴が理解され、より多くの患者さんに有効な治療法が届くこと、ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスが解消されていくことが期待されます。
エンハーツ、HER2陽性早期乳がんの術前治療を評価するDESTINY-Breast11試験の結果発表
第一三共株式会社は2025年5月7日、DESTINY-Breast11試験の結果を発表しました。
DESTINY-Breast11試験は、再発リスクの高いHER2陽性の早期乳がん患者さん927人を対象に実施された第3相試験です。この試験では、術前治療としてトラスツズマブ デルクステカン(製品名:エンハーツ)またはトラスツズマブ デルクステカン投与後にパクリタキセル、トラスツズマブ、ペルツズマブの併用療法(THP療法)とドキソルビシン+シクロホスファミド投与後にTHP療法を行う(ddAC-THP療法)を比較しました。
試験の結果、トラスツズマブ デルクステカン-THP療法はddAC-THP療法と比較して、主要評価項目の病理学的完全奏効率における統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善が認められました。また、重要な副次評価項目である無イベント生存期間に関しては、初期の改善傾向が認められたものの、解析時点では十分なフォローアップ期間に達していなかったため、引き続き評価が継続されます。安全性についても、トラスツズマブ デルクステカン投与後にTHP療法を行った術前療法は、ddAC-THP療法に対し良好な安全性プロファイルを示しました。
固形がんに対する新たなCAR-T細胞の開発に成功
名古屋大学は2025年5月8日、固形がんに広く発現する抗原を標的としたCAR-T細胞の開発に成功したことを発表しました。
CAR-T細胞療法は、白血病や悪性リンパ腫などの血液悪性腫瘍に対するCD19やBCMAを標的とした治療として承認されていますが、固形がんに対しては実用化されていません。
今回研究グループは、肺がんや膵臓がんなど複数の固形がんで強く発現している「Eva1」を標的としたCAR-T細胞(Eva1CAR-T)を開発。マウスを用いた動物実験において、正常細胞に対する過剰な反応を抑制しつつ、腫瘍に対しては有効な反応を示す可能性が明らかとなりました。
Eva1CAR-T細胞は、固形がんに対する新たな免疫療法としての臨床応用が期待されます。