【企業提供】前立腺がん、膀胱がん患者さんの声に耳を傾けて~自分らしい選択のため、情報を手の届きやすいところに~

武内 務さん
前立腺がん患者 NPO法人腺友倶楽部 理事長 武内 務さん
小出 宗昭さん
膀胱がん患者 中小企業支援家 小出 宗昭さん

インタビュー:2024年9月26日 場所:第一ホテル東京
2025年5月 提供:ヤンセンファーマ株式会社

がんになると、治療に関する疑問や生活上の困りごとなどを解決するため、さまざまな情報が必要となる。今後新しい治療法が登場するにつれて、情報の重要性はさらに高まるといえるだろう。前立腺がん患者である武内務さんは、自身が情報収集に苦労した経験をもとに患者会を設立し、理事長を務めている。膀胱がん患者である小出宗昭さんも、患者さんに向けた情報発信の重要性を感じているという。前立腺がん、膀胱がんと長く向き合ってきたおふたりに、がんと診断されたときの心境や自分に合った治療選択、患者会をはじめとした患者同士のつながりの重要性などについてお話をうかがった。

※この記事で紹介する患者様の症例について、全ての前立腺がん、膀胱がん患者様が同様の経過をたどるわけではございません。疾患や治療等に関して気になることがありましたら、医師へご相談ください。

恐怖、驚き、安堵……がんと診断されたときの心の揺れ

おふたりががんと診断されるまでの経緯を教えてください。

武内 務さん

武内  2004年の秋に、前立腺がんの腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)の値が異常に高いことがわかりました。検査入院の結果、前立腺がんと診断されました。

小出  1995年末に大量の血尿が出て病院を受診しました。年明けに内視鏡手術の経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けて組織を調べたところ、膀胱がんと診断されました。

がんという診断をどのように受け止められたのでしょうか。

武内  診断前に、私のPSA値では前立腺がんが強く疑われるだけでなく転移の可能性もあるという情報をインターネットで見たため、がんが転移しているのだと思い込んでしまい、恐怖で眠れない日が続きました。幸いにも転移は見つからず、がんと診断されたのにむしろ少しホッとしました。

小出  私は当時まだ30代でしたので、腰を抜かすほど驚きました。ただ、先生から「治療方針や注意点を守ってもらえれば大丈夫ですよ」と言われ、信頼している先生がそうおっしゃるのなら大丈夫だろうと思いました。診断を受けた日の夜は思い悩んで眠れませんでしたが、翌日からは先生と話し合ったことを守って前向きに進もうと決めました。

納得のいく治療選択ができるよう情報収集を徹底

がんと診断されてから、どのような治療を受けてきたのでしょうか。

武内  診断時に「手術は困難」と言われ、セカンドオピニオンでも治療は難しいとのことでした。何とか治す方法はないかとインターネットで徹底的に調べ、強度変調放射線治療(IMRT)を受けました。その後は趣味のマラソン大会に出場できるほど安定していましたが、2012年に再発がわかり、ホルモン療法を受けました。その後、リンパ節転移が2度見つかり、その都度治療を受けています。

小出  初回の手術以降、何度か再発を繰り返し、そのたびにTURBTと抗がん剤の膀胱内注入を受けていました。しかし、2022年の再発時にがんが進行していることがわかり、検討の末、同年に膀胱全摘除術を受けました。

治療選択にあたって重視したことを教えてください。

武内  治療は難しいと言われても諦めずに納得できる治療法を自ら探すことです。国内だけでなく海外のWebサイトまで調べ尽くした結果、当時はまだ広まっていなかったIMRTの情報を見つけ、国内でこの治療法を行っている病院に問い合わせることができました。

小出  自らの情報収集に加え、医療関係者へ積極的に相談することです。膀胱摘出の際には、ストーマを作るのか、体の中に自身の腸で尿をためる袋を作るのか選択する必要がありました。先生は両方の選択肢について丁寧に説明してくださいました。私は仕事に復帰するために納得できる選択がしたいと思ったので、自分でも大学病院のWebサイトなどで情報を収集し、過去にお世話になった先生方にも相談しました。そして最終的にはストーマを選びました。

まずは患者さんに情報を。一人ひとりに合った治療選択

小出 宗昭さん

がん治療では、遺伝子検査により遺伝子変異などの特徴を調べた上で、患者さんごとに合う薬を使用して治療を行う「個別化医療」もあります。今後治療を検討される際に、どのようなことが求められるでしょうか。

武内  前立腺がんでは、PSA検査や直腸診、画像検査、生検などの検査があり、がんの進行に応じて遺伝子検査が行われることもあります。遺伝子検査では、自分のがん組織や、血液や尿に含まれる細胞やDNAを使って、治療の対象となる遺伝子変異などがあるかどうかを調べるのですよね。事前の検査で自分に合う治療法が見つかる可能性があるということは、ありがたいと思います。

小出  私も同感です。少しでも治療効果の高い選択肢を探したいですよね。

武内  ただ、個別化医療に関する情報を得る機会は限られているとも感じます。病院や企業、メディア、患者会など、情報発信を行っているところはあるのですが、それでも情報を探し出すのに苦労します。たとえば、治療に関する特集を組んで各手段で一斉に発信するなど、伝わりやすい方法が必要かもしれません。

小出  おっしゃる通りで、情報を得るのが難しい状態だと感じます。情報が必要になったときに、かなり苦労して探さなければ、求める情報にたどり着けないのではないでしょうか。たとえテレビなどのメディアで患者ごとに合う薬を使用する治療が取り上げられ、目に留まったとしても、さらに詳しい情報が欲しいと考えたときに、すぐに見つけられる状態になっていない印象です。

情報の見つけにくさは、個別化医療だけではなく、新しい治療薬などについても言えることだと思います。治療に関してより多くの情報を得ることができれば、自分が新しい治療を受けられるか、または今の治療法のままがよいかなどを先生に相談することもできるでしょうし、より「自分ごと」として治療を選択しやすくなると思います。患者が求めている情報をもっと行き届かせ、一人ひとりが自分に合った治療を選択し、自分らしい人生を送れるようになることが大切だと考えます。

患者さんに向けた情報源としての患者会の役割

武内さんは前立腺がんの患者会「NPO法人腺友倶楽部」を立ち上げていらっしゃいますが、その経緯を教えてください。

武内  前立腺がんの情報を集めるのに苦労したという経験から、自らWebサイトで情報発信を始めました。他の患者の苦労が少しでも減るようにと活動を続け、2014年に患者会という形になりました。

普段はオンラインで活動しており、メーリングリストを使った意見交換を中心に、個別の相談もあります。「腺友茶論」というオンラインでの集まりも月1回開催しています。前半は会員の講演、後半は少人数で交流する時間としていますし、対面セミナーも開催するなど、会員同士が会話できる機会を作っています。

小出さんは、患者会や患者同士のつながりの重要性について、どうお考えでしょうか。

小出  確実に必要なものだと思っています。私自身、ストーマを作ることになった際に、ストーマ装具を付けながら仕事をするために必要な情報を探しましたが、全く見つけられませんでした。たとえば、排尿によりストーマ装具がどのくらい膨らむかなどです。そこで術前には看護師と相談し、ストーマ装具の代わりに水を入れた袋を体に貼り付けた状態でスーツを着用して、ウエストのサイズ調整がどの程度必要かを確認しました。このような経験したからこそわかることを患者同士で共有できる患者会の存在は、患者が適切な情報を得るためにも重要ですよね。

一方で、患者会があればそれで十分というわけではないとも感じます。当事者が集まって良い交流の場になると思う一方、内輪に留まってしまってはもったいないと思います。病気に関する問題を、当事者だけではなく社会全体で考えていくためにも、メディアに取材してもらうなど、もっと広く情報を発信する必要があるのではないかと考えます。

おふたりの今後の展望をお聞かせください。

武内  腺友倶楽部では、毎年「Mo-FESTA CANCER FORUM」というセミナーを開催しています。「Mo」は口ひげ(moustache)のことです。現在は前立腺がんが中心ではありますが、男性がんを広く扱いたいと考えています。膀胱がんも男性患者が多く、今後取り上げたいがんの一つです。小出さんは中小企業支援のお仕事をされていて、PRのアイデアもお持ちのようですから、ぜひお知恵をお貸しいただきたいですね。

小出  ありがとうございます。これまでの仕事での経験を活かしてご協力できることがあるかもしれませんので、少しでも貢献できればと思います。

個人的には、働きながら治療を受けている方に向けた情報がなかなか見つからない点に問題意識があります。がんの治療で通院していると、私より若い方も多く見かけますし、仕事の合間に来ているような方も目に付きます。働きながら治療を受けている方がたくさんいるのであれば、そのための情報を探している方もそれだけ多くいるはずですよね。私自身の経験を踏まえたリアルな情報を発信していきたいと考えています。

プロフィール

武内 務さん
前立腺がん患者 NPO法人腺友倶楽部 理事長
2004年に前立腺がんと診断される。自身が治療法を探すのに苦労した経験から、Webでの情報発信を開始し、2014年に前立腺がんの患者会「腺友倶楽部」を設立、2016年にNPO法人化。オンライン・オフラインでの情報発信や患者同士の交流機会の提供、セミナーやフォーラムの開催など、積極的な活動を展開している。
また、前立腺がんのみにとどまらず、男性がん全般の啓発にも取り組んでいる。


小出 宗昭さん
膀胱がん患者 中小企業支援家
1996年に膀胱がんと診断される。仕事で多忙を極める中での発病だったが、働きながら25年以上にわたってがん治療を継続している。2022年、がんの進行に伴い膀胱を摘出し、ストーマを装着。その後も精力的に全国を飛び回り、事業支援や講演活動を行っている。また、働きながらがん治療を受けている人が多いことに気づき、朝日新聞の連載等を通して自身の患者としての経験を共有している。