抗HER2抗体薬物複合体DS-8201、先駆け審査指定制度の対象品目に指定
2018/03/29
文:がん+編集部
がん化学療法後に増悪したHER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発胃がんの治療
第一三共株式会社は3月27日、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)DS-8201について、がん化学療法後に増悪したHER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃がん患者さんに対する治療として、厚生労働省が先駆け審査指定制度の対象品目に指定したことを発表しました。
DS-8201は、HER2に対するADCです。ADCは、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体医薬を介して、薬物をがん細胞へ直接届けるため、薬物による副作用を抑えつつ、がん細胞への攻撃力を高めた薬剤です。HER2は、がん細胞の表面に存在し、細胞の成長を促進するタンパク質で、10~25%の胃がんで過剰に発現しています。抗HER2療法に対して抵抗性となったHER2陽性の胃がんでは、現在、有効な分子標的治療薬がありません。
先駆け審査指定制度とは、革新的医薬品や医療機器・体外診断用医薬品・再生医療等製品について、世界に先駆けて日本での早期実用化を目指す厚生労働省の施策の1つです。生命に重大な影響がある重篤な疾患等に対して、極めて高い有効性が期待される医薬品や再生医療等製品等を指定し、日本の患者さんに世界で最先端の治療薬を最も早く提供することを目指しています。
今回の先駆け審査指定は、HER2発現の胃がん患者さんを対象に、DS-8201の安全性と予備的有効性を評価した第1相臨床試験の中間結果に基づくものです。この結果は、2018年1月に開催された米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI)で発表されました。
DS-8201は、米国食品医薬品局(FDA)より、HER2陽性の再発・転移性乳がん治療を対象として画期的治療薬(Breakthrough Therapy)指定とファストトラック指定を受けています。現在、HER2発現がんの患者さんを対象とした複数の第1相臨床試験に加え、HER2陽性乳がん、HER2発現胃がん、HER2発現大腸がんの患者さんを対象とした3つの第2相臨床試験が実施されています。