乳がんホルモン療法の効果と予後を左右するメカニズム発見

2018/11/21

文:がん+編集部

  乳がんに対するホルモン療法の効果と予後を左右するメカニズムが発見されました。比較的予後がいいとされるルミナルA型の患者さんの中にも、予後の悪い患者さんが20%ほど存在しており、その診断と鑑別ができるようになる可能性があります。

Fbxo22たんぱく、乳がん診断の腫瘍マーカーや新薬開発の可能性も

  東京大学は11月13日、乳がんに対するホルモン療法の予後を左右するメカニズムを発見したと発表しました。東京大学医科学研究所癌細胞増殖部門癌防御シグナル分野の中西真教授と城村由和助教、聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科応用分子腫瘍学太田智彦教授らの研究グループによるものです。

 エストロゲン受容体陽性でHER2陰性の乳がんでは、エストロゲンの刺激でがん細胞が増殖します。そのため抗エストロゲン薬が有効で、比較的治療効果が高く予後のいい乳がんといわれています。しかし、そのなかには抗エストロゲン薬の効果が低く予後の悪い患者さんが約20%程度います。こうした高リスクの患者さんを鑑別する方法やなぜ抗エストロゲン薬の効果が低いのかというメカニズムなどは、わかっていませんでした。

 研究チームはFbxo22という分子が抗エストロゲン薬の効果を左右し、予後の決定に重要な役割を果たしていることを解明しました。乳がん患者さんの生検検体や病理検体を解析したところ、このFbxo22たんぱく質の発現が低い乳がんでは、抗エストロゲン療法に対して抵抗性があり、再発率が高いことがわかったそうです。

 今後、Fbxo22をこうした乳がんの腫瘍マーカーとして活用することで、治療選択を行うための診断法の確立やこの分子を標的とした新たな治療薬の開発が期待されます。