トラスツズマブ デルクステカン、HER2低発現の乳がんに対する第3相試験開始

2019/01/24

文:がん+編集部

 HER2低発現の乳がん患者さんを対象としたトラスツズマブ デルクステカンの治験が開始されました。HER2低発現の乳がんに対する初の治療薬として期待されます。

乳がんの40%以上を占めるHER2低発現の治療薬として期待

  第一三共株式会社は1月15日、HER2低発現の乳がん患者さんを対象としたトラスツズマブ デルクステカンの第3相臨床のDESTINY-Breast04試験を開始し、最初の患者さんに投与を始めたことを発表しました。

 DESTINY-Breast04試験は、化学療法による前治療を受けたHER2低発現の再発・転移性乳がん患者さんを対象とした治験です。トラスツズマブ デルクステカンと治験担当医師の選択による化学療法を比較して安全性と有効性を評価します。主要評価項目は無増悪生存期間※1、副次的評価項目は全生存期間※2、全奏効率※3、奏功期間などです。

 乳がんは、ホルモン受容体、HER2発現の状態により4つのサブタイプに分類されます。HER2低発現でホルモン受容体陽性の場合、ホルモン療法とCDK/6阻害薬の併用が推奨され、治療抵抗性になった場合に化学療法が行われます。ホルモン受容体陰性HER2陰性の乳がんは、トリプルネガティブといわれ、始めから化学療法が行われます。いずれの場合も治療法が限られており、また乳がん患者さんの40%以上はHER2低発現といわれ、多くの乳がん患者さんがやがて病勢進行となります。

 トラスツズマブ デルクステカンは、胃がん大腸がん非小細胞肺がんなどの臨床試験やがん免疫を含む他剤との併用療法による治験も積極的に進められています。第一三共は、様々ながん種で新しい治療選択を早く提供できるように、トラスツズマブ デルクステカンの開発を進めるとしています。

DESTINY-Breast04試験

対象:切除不能、転移性乳がん
条件:ホルモン陽性陰性に関わらずHER2低発現で、前治療を受け進行した患者さん
フェーズ:第3相臨床試験
試験デザイン:ランダム化、並行介入
登録数:540人
試験群:トラスツズマブ デルクステカン
対照群:医師の選択による化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ナブパクリタキセル)
主要評価項目:無増悪生存期間
副次的評価項目:全生存期間、全奏効率ほか

※1:奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。
※2:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。
※3:治療によって、がんが消失または30%以上小さくなった患者さんの割合のことです。完全奏効(CR)(腫瘍が完全に消失)と、部分奏効(PR)(腫瘍が30%以上小さくなる)を足して、治療患者の総数で割ったものです。