悪性軟部腫瘍の治験、LARTRUVOは全生存期間を達成せず
2019/02/06
文:がん+編集部
進行または転移性の悪性軟部腫瘍に対するオララツマブ(製品名:LARTRUVO)の治験の結果が発表されました。全試験集団および部分集団の両方で、主要評価項目である全生存期間※1を達成しなかったそうです。
有用性を示した第2相臨床試験と異なる結果
米イーライリリー社は1月18日、悪性軟部腫瘍に対するオララツマブの第3相臨床試験ANNOUNCE試験の結果を発表しました。全試験集団、平滑筋肉腫部分集団ともに、生存期間に差はなく、主要評価項目である全生存期間を達成できなかったそうです。
ANNOUNCE試験は、根治の難しい、局所進行、切除不能または転移性の悪性軟部腫瘍で、アントラサイクリン系薬剤による治療を受けていない患者さんが対象です。オララツマブ+ドキソルビシン(製品名:アドリアシン)併用療法とプラセボ+ドキソルビシンを比較した臨床試験です。主要評価項目は、全試験集団と平滑筋肉腫部分集団の2つの集団に対する全生存期間でした。
ANNOUNCE試験に先立ち行われた、悪性軟部腫瘍患者さん133人を対象とした第2相試験では、オララツマブ+ドキソルビシンの併用療法は生存期間の有用性を示していました。その結果に基づき、米国での迅速承認と欧州連合での条件付き承認を取得していました。今回、2つの臨床試験で異なる結果となりましたが、現在オララツマブを投与され臨床的有用性が認められる患者さんの場合は、医師との相談の上、治療を継続できます。しかし、治験参加者以外で新たにオララツマブによる治療を開始することはできなくなり、イーライリリーも承認国でのオララツマブの販売活動を停止します。
リリー・オンコロジーのプレジデントであるAnne White氏は「本試験においてオララツマブが、進行または転移性悪性軟部腫瘍患者さんの生存期間を改善することができなかったことは驚きであり、大変残念です。リリーは、悪性軟部腫瘍患者さんの支援に努め、2つの試験で異なった結果となった原因を究明するため、本試験のデータを精査します」とコメントしています。
ANNOUNCE試験
対象:進行性または転移性の悪性軟部腫瘍
条件:アントラサイクリン系薬剤による治療を受けていない患者
フェーズ:第3相臨床試験
試験デザイン:無作為化、平行群間、二重盲検
登録数:460人
試験群:オララツマブ+ドキソルビシン
対照群:プラセボ+ドキソルビシン
主要評価項目:全生存期間
副次的評価項目:無増悪生存期間※2、客観的奏効率※3、奏功期間ほか
※1:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。
※2:奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。
※3:治療によって、がんが消失または30%以上小さくなった患者さんの割合のことです。完全奏効(CR)(腫瘍が完全に消失)と、部分奏効(PR)(腫瘍が30%以上小さくなる)を足して、治療患者の総数で割ったものです。