白血病の発症に関わる新たな分子メカニズムを発見、新薬の開発にも期待
2019/03/15
文:がん+編集部
白血病の発症に関わる新たな分子メカニズムが発見されました。新たな白血病の治療薬や再発抑制薬の開発が期待されます。
新概念に基づく白血病治療薬や再発抑制薬の開発も
日本医療研究開発機構は3月6日に、白血病の発症に関わる新たな分子として、造血幹細胞や造血前駆細胞の増殖を適切に調整する分子Regnase-1を同定したことを発表しました。大阪大学微生物病研究所の木戸屋浩康助教、高倉伸幸教授(免疫学フロンティア研究センター兼任)らの研究グループによるものです。
研究グループは、Regnase-1という分子が造血幹細胞や造血前駆細胞の自己複製を制御していることを明らかにし、マウスでRegnase-1遺伝子を欠失させると急性骨髄性白血病と類似した症状を示すことを発見しました。Regnase-1は、リボヌクレアーゼと呼ばれる、リボ核酸(RNA)を切断する酵素の1つです。
造血幹細胞が増殖や分化をすることで白血球、赤血球、血小板などの血液細胞は作られています。白血病は、何らかの原因で造血幹細胞や造血前駆細胞が正常に増殖・分化できずに、異常な血液細胞が増加する病気です。今回、正常な状態では造血幹細胞の異常増殖に対するブレーキとして働くRegnase-1が、異常になると白血病の発症に関与する可能性が示されました。
白血病の発症率は年々増加傾向にあり、年間約8,500人の患者さんが亡くなっています。プレスリリースでは、本研究成果の意義として「白血病は若年層に多く発症するがんであり、同世代のがんの約4分の1とも言われています。治療法の発展によって寛解できるようになりつつありますが、患者さんの多くは再発の恐怖に悩まされており、完全寛解を可能とする治療法の開発が望まれています。今回、白血病の原因となる分子機構が新たに同定されたことで、Regnase-1などを標的とした新概念に基づく白血病治療薬や再発抑制薬の開発が期待されます。」と発表しています。