ROS1/TRK阻害剤エヌトレクチニブ、ROS1陽性非小細胞肺がんで国内申請
2019/03/22
文:がん+編集部
ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんに対して、ROS1/TRK阻害剤エヌトレクチニブが国内申請されました。新たな治療選択として期待されます。
NTRK融合遺伝子陽性の局所進行または転移性固形がんに続く適応2例目
中外製薬株式会社は3月15日に、ROS1/TRK阻害剤エヌトレクチニブのROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんに対する製造販売承認の国内申請を行ったことを発表しました。2018年12月に申請した、NTRK融合遺伝子陽性の局所進行または転移性固形がんに続く申請です。
今回の承認は、オープンラベル多施設国際共同第2相臨床試験(STARTRK-2試験)および海外で実施した3つの第1相臨床試験(STARTRK-NG試験、STARTRK-1試験、ALKA-372-001試験)の統合解析結果に基づいています。有効性に関しては、ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者さん53名を対象として行い、安全性に関しては、4つの試験に登録された355名で行われました。
STARTRK-2試験は、NTRK1/2/3、ROS1、またはALK遺伝子癒合陽性の固形がんを対象としたバスケット試験です。バスケット試験とは、がん種にかかわらず薬のターゲットとなる遺伝子変異があれば登録できる試験のことです。そのため、STARTRK-2試験に登録されたがん種は、非小細胞肺がんをはじめ、乳がん、胆管がん、大腸がん、頭頸部がん、リンパ腫、メラノーマ、神経内分泌腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、脳腫瘍、腎細胞がんほかさまざまです。
STARTRK-2試験では、エヌトレクチニブを4週間1サイクルで1日1回600㎎投与された患者さんのうち、37名がROS1融合遺伝子陽性でした。そのほか関連試験と合わせてエヌトレクチニブが投与された53名の患者さんの奏効率※1は、77.4%で、完全奏功が5.7%という結果だったそうです(観察期間中央値15.5か月)。
同社の上席執行役員プロジェクト・ライフサイクルマネジメント共同ユニット長の伊東康氏は「エヌトレクチニブにより、先駆け審査指定制度のもと申請した非常に稀なNTRK融合遺伝子陽性の固形がんとともに、1~2%で発現するROS1融合遺伝子陽性の非小細胞がんに対する治療選択肢として承認取得を目指し、引き続き個別化医療の進展に貢献できるよう取り組んでまいります」とコメントしています。
STARTRK-2試験
対象:NTRK1/2/3、ROS1、またはALK融合遺伝子を伴う局所進行性または転移性の固形がん
条件:TRK、ROS1、ALK阻害薬による治療歴のない患者
フェーズ:第2相臨床試験
試験デザイン:平行群間、非盲検
登録数:300人
試験群:エヌトレクチニブ
主要評価項目:客観的奏効率
副次的評価項目:奏功持続期間、奏効到達期間、無増悪生存期間※2、全生存期間※3ほか
※1:完全奏効(CR)(腫瘍が完全に消失)と、部分奏効(PR)(腫瘍が30%以上小さくなる)を足して、治療患者の総数で割ったものです。奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。
※2:奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。
※3:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。