相談:食道がんの手術、規定通りのリンパ節郭清をしていなかったため、2年後に再発

再発 手術(外科治療) 治療選択

早期食道がん(胸部中部)で食道を亜全摘(食道と転移しやすいリンパ節を一緒に切除)したのですが、「食道癌取扱い規約第11版」で2群にあたる鎖骨上リンパ節[104]を、「早期がんでT1b(SM2)かつM0」という理由で郭清(がんの周辺にあるリンパ節を切除すること)をしていませんでした。

手術から約2年後、鎖骨上リンパ節[104]に転移が見つかりました。事前に説明はなく、転移がわかってから知りました。なぜ、事前説明がなかったのでしょうか。

(本人、男性)

回答:胸部中部食道がんでも規約改訂により鎖骨上リンパ節[104]は2群となり3領域郭清が必要

医師の判断に関しては回答いたしかねますので、食道がんの治療に関して、日本食道学会の「食道癌診療ガイドライン2017年版」による、食道がんの治療のポイントをご案内いたします。



ステージ0、1の食道がんの治療方針決定
・ステージ0、1の食道がんの治療方針決定では、内視鏡検査、頸部・胸部・腹部CT検査、PET検査などによるステージ評価が第一に行われます
・壁深達度の評価が、内視鏡的切除術、手術あるいは化学放射線療法の治療選択の判断では重要とされています
・壁深達度の評価に迷う場合や全身状態不良の場合などは、まず侵襲の低い内視鏡的切除術の適応が考慮されます
・内視鏡的切除術後の組織学的評価は、追加治療の要否を検討する上で極めて重要とされています
・術後分類T1a-MM/pT1b-SMと診断された場合は追加治療(手術または化学放射線療法)を考慮する必要があるとされています
・術前にステージ1(T1b)と診断された場合は、手術に耐えられるかどうかを判断の上、外科手術または化学放射線療法の適応が検討されます

胸部食道がんに対する手術
・胸部食道がんは頸・胸・腹の広範囲にリンパ節転移がみられることが多く、T1b-SM2、3 以上は進行がんとして右開胸により胸腹部食道を全摘し、頸部、胸部、腹部の3領域のリンパ節を含めた切除範囲とすることが一般的です
・胸部中部食道がんでも規約改訂により鎖骨上リンパ節[104]は2群となりD2郭清には3領域郭清が必要となりました

食道がん治療後の経過観察
・食道がん治療後の経過観察の目的は、(1)再発の早期発見・早期治療、(2)多発がん・重複がんの早期発見・早期治療です
・経過観察の方法は、初回治療や初回治療時のがんの進行度によって異なります
・日本の根治手術後の再発率は29~43%で認められ、再発のうち約85%は術後2年以内の早期に認められますが、それ以後の再発もあります
・再発部位は、リンパ節再発・局所再発・臓器再発・播種性再発がありますが、複合再発も多くあります
・実際の食道がん根治切除後の経過観察法は施設ごとに決められているのが現状で、定期的な経過観察の有用性や有効な経過観察法を明らかにした報告はないと「食道癌診療ガイドライン2017年版」には記されています
・同ガイドライン検討委員会が行った全国調査では、切除後の最初の2年以内は年4回以上、3年目以後は年2回以上、腫瘍マーカーやCTを中心とした画像診断を含む経過観察を5年目まで継続している施設が多く、10年間行う施設もありました
・主として胸腹部造影CT、上部消化管内視鏡などが中心に行われ、必要に応じて頸部・腹部US、骨シンチやPET-CTが行われていました
・CTの頻度は3~6か月ごとの施設が多く、進行度に応じて、また術後年数に応じて変化する場合が多くありました

参考情報:
食道癌診療ガイドライン2017年版
http://www.jsco-cpg.jp/esophageal-cancer/
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