リムパーザ、BRCA陽性卵巣がんの初回治療後の維持療法として承認
2019/07/05
文:がん+編集部
オラパリブ(製品名:リムパーザ)が、BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんの初回治療後の維持療法として承認されました。
リムパーザ、SOLO1試験で死亡リスクを70%低減
アストラゼネカ株式会社は6月19日に、BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんの初回治療後の維持療法として、PARP阻害薬オラパリブが販売製造承認事項の一部変更の承認を得たことを発表しました。今回の承認は、国際共同第3相試験SOLO1試験の結果に基づくものです。
SOLO1試験は、プラチナ製剤ベースの初回化学療法で奏功が維持されているBRCA遺伝子変異陽性の卵巣がん患者さん391人を対象に、最長2年間あるいは病勢進行までオラパリブとプラセボを投与したグループで、主要評価項目の無増悪生存期間を比較することにより評価されました。その結果、オラパリブは、プラセボに対して病勢進行あるいは死亡リスクを70%低減させ、統計学的に有意かつ臨床的に有意義な無増悪生存期間の延長が認められました。
オラパリブは、損傷したDNAを修復するPARPと呼ばれる酵素を阻害する分子標的薬です。正常な細胞で2本鎖DNAの1本に損傷が起こると、PARPが修復します。PARP阻害薬で修復を妨げると、やがて2本目のDNAも損傷しますが、通常はBRCA1とBRCA2というタンパク質が、2本とも損傷したDNAを修復します。しかし、BRCA1/2遺伝子に変異があると、2本とも損傷したDNAの修復ができず、細胞は死に至ります。オラパリブは、BRCA1/2遺伝子変異によってDNAが修復できずがん化した細胞に特異的に働き、PARPを阻害することでがん細胞のDNA損傷の修復をさせず細胞死に至らしめます。2018年1月に「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法」の承認を取得し、同年7月には「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」の治療薬として適応を拡大しています。
同社の専務取締役執行役員 研究開発本部長の谷口忠明氏は「進行卵巣がんの約7割が初回治療開始後3年以内に再発し、再発した卵巣がんは治癒が困難となるため、化学療法後の効果を維持することは大きなアンメットニーズとして存在していました。この度、リムパーザをBRCA遺伝子変異陽性の卵巣がん患者さんの新たな治療選択肢としてお届けできることを大変嬉しく思います。リムパーザにおいては一連のがんに対して複数の開発プロジェクトが進行中であり、さらに多くの患者さんの治療に貢献できるよう、引き続き研究開発に注力してまいります」と、述べています。