自律神経が、がんの進展や予後に影響

文:がん+編集部

 がんの進展や予後に、自律神経が影響していることが発見されました。今後、新たながん治療につながる可能性があります。

ストレスなく心を平穏に保つことが、がん抑制に大切である可能性

 岡山大学は7月5日に、自律神経が乳がん組織内に入り込み、がんの進展や予後に強く影響することを発見したと発表しました。同大学大学院医歯学薬学総合研究科細胞生理学分野の神谷厚範教授、東京医科大学医学総合研究所の落谷孝広教授、国立がん研究センター中央病院の下村昭彦医師、福島県立医科大学の小林和人教授、同大の加藤樹講師らの共同研究によるものです。

 自律神経は、脳から各臓器へ信号を送ることで臓器の働きを調整しています。これまで疫学研究により、慢性ストレスががんの進展を加速させることが報告されおり、ストレスによる自律神経の変化ががんに影響する可能性が示唆されていました。

 今回、研究グループは、人間の乳がん組織をマウスに移植した動物実験を行うことで、自律神経が乳がんの増大に伴って乳がん組織内に入り込み、がんの増殖や転移に強い影響を及ぼすことを発見しました。また、人間の乳がん組織を解析することで、交感神経密度の高い患者さんでは、交感神経密度の低い患者さんに比べて予後不良であることも明らかにしました。さらに、がん組織に分布する自律神経の遺伝子を操作し、その機能をコントロールする「局所神経エンジニアリング」も開発。この技術で、マウスに移植した乳がん組織の交感神経を刺激すると、がんの大きさが増大し遠隔転移も増えましたが、交感神経を除去するとがん増大と遠隔転移は抑制されたそうです。

 この研究成果により、今後、がん組織にある自律神経を操作する神経医療(遺伝子治療など)が、がんの新規治療戦略になる可能性があります。

 神谷厚範教授は「ストレスなどによるこころの状態や交感神経の緊張が、がんを進展させ得ることが明らかになりました。こころを平穏に保つことが、がんを抑制するのにも大切かもしれません」と、述べています。