多発・大型進行肝臓がん、新規治療法を考案

文:がん+編集部

 多発・大型の進行肝臓がんに対する新規治療法「LEN-TACE sequential治療」が考案されました。レンバチニブ(製品名:レンビマ)を先行投与した後、肝動脈塞栓療法(TACE)を行う治療法です。

生存期間2倍延長、死亡リスクを52%低減

 近畿大学は7月31日、これまで治療法がなかった多発・大型肝臓がんのなかでも、特に進行した患者さんに対する新規の治療法として「LEN-TACE sequential治療」を考案したことを発表しました。分子標的薬レンバチニブを先行投与した後、TACEを行う治療法。同大学医学部内科学教室消化器内科部門の工藤正俊主任教授らの研究グループによる研究成果です。

 レンバチニブは、全世界で承認され進行肝がん患者さんの第一選択の治療薬として現在積極的に使用される治療薬。腫瘍縮小・壊死効果にも優れています。このレンバチニブを、中等度進行期の最初の導入治療として使用することは、腫瘍の縮小や壊死効果の誘導するのではないか。また、腫瘍内の血管径を正常の血管サイズに戻す作用により、後から追加する抗がん剤や塞栓物質を腫瘍内に均一に分泌させることができるのでは。レンバチニブが最も効果の出ているタイミングでTACEを行えば、TACEに誘導される血管新生因子を抑制し、再発や転移を防ぐのではないか、と仮設を立て、その立証を目的に研究は進められました。

 今回考案されたLEN-TACE sequential治療と1970年代に確立された標準治療法のTACEを比較した臨床研究は、2008~2018年の間に、国内7施設と香港1施設の計8施設で行われました。全肝多発・大型の進行期の患者さんで、レンバチニブを先行投与された(LEN-TACE sequential治療)患者さん30人とTACE単独治療60人の患者さんを対象に、奏効率、肝機能悪化の推移、無増悪生存期間、全生存期間で評価しました。

 その結果、レンバチニブ先行投与群の奏効率は73.3%、TACE単独が33.3%でした。肝機能の悪化も有意に低く、無増悪生存期間はレンバチニブ先行投与群が16か月、TACEが3か月でした。全生存期間は、レンバチニブ先行投与群が37.9か月、TACEが21.3か月。生存期間を2倍近く延長させ、死亡リスクを約52%下げることを証明しました。また、レンバチニブ先行投与群のうち4人は、がん細胞がすべて消失し完全治癒。無治療のまま経過観察している患者さんもいるようです。極めて治療効果の高い方法で、完全治癒の可能性もある治療法として期待されます。

 肝臓がんは、早期、中等度早期(少数多発・中型)、中等度進行期(全肝多発・大型)、進行期(脈管侵襲や遠隔転移あり)、末期と大きく5つに分類されます。早期では、手術による切除やラジオ波焼灼法、中等度早期ではTACE、進行期では分子標的薬と、それぞれ標準治療が確立されています。しかし、最も患者数が多い、中等度進行期では、TACEの効果が乏しく再発を繰り返し、進行がんや末期に移行していきます。

 LEN-TACE sequential治療が、生存延長効果を証明したことにより世界の肝がんの治療体系を大きく変え、新しい標準治療法として位置づけられることが予測されています。