リムパーザ、去勢抵抗性前立腺がんの治験で無増悪生存期間を2倍以上延長

2019/11/06

文:がん+編集部

 相同組換え修復関連遺伝子変異陽性(以下、HRRm)の去勢抵抗性前立腺がんを対象とした治験で、BRCA1/2遺伝子またはATM遺伝子変異を有する患者さんでは、オラパリブ(製品名:リムパーザ)の投与により無増悪生存期間が2倍以上延長されました。

リムパーザ、病勢進行または死亡リスクを66%低減

 アストラゼネカとMSDは9月30日、新規ホルモン薬による前治療中に病勢進行が認められた、HRRm転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんを対象とした第3相PROfound試験の結果を発表しました。

 PROfound試験は、HRRmの去勢抵抗性前立腺がん患者さん387人を対象とした臨床試験です。新規ホルモン薬「アビラテロン」(製品名:ザイティガ)、「エンザルタミド」(製品名:イクスタンジ)と、オラパリブのいずれかを投与し、有効性と安全性を評価する試験です。相同組換え修復(HRR)とは、DNAの二本鎖切断および鎖間架橋の形で損傷が起こっている場合にDNAを修復するプロセスで、それに関連する遺伝子として、BRCA1/2、ATM、CDK12など15の関連遺伝子が知られています。

 BRCA1/2またはATM遺伝子変異陽性の患者さんを解析した結果、オラパリブ群は無増悪生存期間を統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示しました。無増悪生存期間の中央値は、アビラテロンまたはエンザルタミド群は3.6か月に対し、オラパリブは7.4か月で、病勢進行または死亡リスクを66%低減させました。

 また、15のHRR関連遺伝子変異陽性の全患者さんを対象に解析も実施。結果、オラパリブ群は病勢進行または死亡リスクを51%低減し、無増悪生存期間の中央値は、オラパリブ5.8か月、アビラテロンまたはエンザルタミド群3.5か月という結果でした。

 安全性に関しては、以前の臨床試験で認められた安全性プロファイルと一貫していました。発現率が20%以上の有害事象は、貧血(47%)、悪心(41%)、疲労/無力(41%)、食欲減退(30%)、および下痢(21%)でした。グレード3以上の有害事象は、貧血(22%)、肺塞栓(4%)、疲労/無力症(3%)、嘔吐(2%)、呼吸困難(2%)、尿路感染(2%)、食欲減退(1%)、下痢(1%)および背部痛(1%)でした。オラパリブ投与群の患者さんの16%が有害事象により投与を中止しました

 PROfound試験の治験責任医師の一人でノースウェスタン大学Robert H. Lurie Comprehensive Cancer Centerの副所長であるMaha Hussainは「我々医師は、転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療の進展を過去15年間見てきました。しかし、これまでの治療は、どの患者でも同じ「画一的」なアプローチであり、腫瘍のゲノム構成やそこから判断できるより効果的な個別化治療の選択や治療効果への影響に気づいていませんでした。私は、PROfound試験の結果と、進行疾患を有すこの患者集団に分子標的治療の可能性を提供するリムパーザの臨床的に意味のあるベネフィットに感動しています。今回の結果を受け、転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療においても個別化治療およびプレシジョン・メディシンの新たな時代に進んだと確信しています」と、述べています。