開発中の「U3-1402」、免疫CP阻害薬の併用で免疫システムが活性

文:がん+編集部

 開発中のがん治療薬「U3-1402」と免疫チェックポイント阻害薬を併用することで、がん細胞を攻撃する免疫システムが活性化することが、実験動物モデル、培養細胞、臨床検体を用いた研究により確認されました。

PD-1阻害薬耐性の腫瘍で高頻度にHER3が発現

 近畿大学は10月30日、第一三共株式会社が臨床開発を進めている新規抗HER3抗体薬物複合体「U3-1402」の腫瘍免疫における役割と、PD-1/PD-L1阻害薬との併用効果を非臨床試験で確認したと発表しました。同大医学部内科学教室の原谷浩司助教、米阪仁雄講師、中川和彦主任教授らの研究チームによるものです。

 免疫チェックポイント阻害薬の長期生存効果は一部の患者さんにしかないことがわかっており、耐性を持ったがん細胞にどう対応するかが課題です。免疫チェックポイント阻害薬と殺細胞薬の併用することで高い治療効果が得られることがわかってきていますが、まだ十分ではなく、さらなる治療戦略の開発が必要とされています。

 U3-1402は、さまざまな固形がんに発現している「HER3」と呼ばれるタンパク質を標的とした抗体薬物複合体です。HER3タンパク質に選択的に結合する抗体に、DNAトポイソメラーゼ阻害薬を結合させた薬剤で、HER3を発現しているがん細胞にピンポイントで殺細胞薬を運ぶことができ、現在、早期臨床試験で安全性と有効性を検証中です。

 研究チームは、実験動物モデル、培養細胞、臨床検体を用いた研究から、U3-1402ががん細胞を攻撃することで、がん細胞の増殖を抑制するとともに、免疫細胞が免疫チェックポイント阻害薬の効果で適切にがん細胞を攻撃することを確認しました。

 U3-1402の効果により、腫瘍細胞から免疫賦活物質HMGB-1が強力に放出されることで、樹状細胞やマクロファージ、NK細胞などの自然免疫系細胞ががん細胞に誘導されました。さらに、T細胞の機能や抗腫瘍能も改善することが示されました。これらは、U3-1402による免疫活性化によりPD-1/PD-L1阻害薬の治療効果が増強すると考えられます。さらに、U3-1402による免疫活性効果ならびにPD-1阻害薬併用効果は、PD-1阻害薬低感受性腫瘍においても認められ、U3-1402によりPD-1/PD-L1阻害薬の耐性を克服できる可能性も示唆されました。本研究では、過去にPD-1阻害薬治療を受けた約80例の固形がん患者さんの腫瘍組織でHER3の免疫組織染色を行い、PD-1阻害薬耐性腫瘍において高頻度にHER3発現が認められることも示されています。

 研究チームは、今後の展望として「U3-1402と免疫チェックポイント阻害薬の併用効果を検討した研究は本研究が初であり、本研究結果を基にU3-1402とPD-1/PD-L1阻害薬の併用治療の臨床開発が進むことが期待されます」と、述べています。