1日ビール1本を10年続けると、がん罹患リスクが上昇

文:がん+編集部

 1日1杯を日常的に10年継続して飲酒した人では、がん罹患リスクが1.05倍程度上昇するという調査・研究が発表されました。

最もがん罹患リスクが高いのは食道がん

 東京大学は12月9日、低~中等度の飲酒とがん罹患リスクを推計した研究成果を発表しました。同大大学院医学系研究科公衆衛生学教室の財津將嘉助教(Harvard T.H. Chan School of Public Health 研究員兼任)、同教室の小林廉毅教授、関東労災病院泌尿器科の武内巧部長らの研究グループによるものです。

 研究グループは、全国33か所の労災病院の入院患者さんの病職歴データベースを用いて、新規がん症例63,232人と、性別・年齢・診断年・病院が等しい良性疾患症例63,232人を同定し、低~中等度の飲酒とがん罹患リスクを推計しました。その結果、がん全体の罹患リスクは低~中等度の飲酒でも容量依存的に上昇し、1日1杯を日常的に10年間継続で、罹患リスクが1.05倍に上昇することが明らかになりました。本研究では、障害飲酒量を、日本酒1号(180ml)、ビール中瓶1本(500ml)、ワイン1杯(180ml)、ウイスキー1杯(60ml)を1単位として、飲酒期間(年)を掛けたものとして定義。喫煙習慣、生活習慣病、職業階層で調整しても、同様の傾向が観察されました。

 がん種によって飲酒の影響はさまざまでしたが、大腸がん、胃がん、乳がん、前立腺がん、食道がんなどの比較的頻度の高いがんでは、低~中等度の飲酒によるがん罹患リスクの上昇にかかわっていることが示唆されました。

 がん全体の罹患リスクは1.05倍ですが、最もリスクが高かったのは食道がんで1.45倍です。肺がん、皮膚がん、子宮体がん、卵巣がん、脳・中枢神経系、甲状腺がん、多発性骨髄腫では、1倍以下でリスクは認められませんでした。

 遺伝的にアルコール代謝の能力が強い欧米人でも、低~中等度の飲酒によるがん罹患リスクの上昇は注目されています。日本人では、遺伝的にアルコール代謝能力が弱い人が多いため、注意が必要です。本研究の結果から、がん予防のための低~中等度の飲酒によるがん罹患リスクの上昇に関する啓発活動が必要と考えられます。

飲酒指数が10drink-year(1日1杯を日常的に10年間継続) の時点での各種がんのオッズ比

部位がん症例数(%)平均年齢オッズ比
(95%信頼区間)
がん全体63,232 (100)691.05 (1.04, 1.06)
各種部位別
口唇、口腔及び咽頭1045 (1.7)671.10 (1.01, 1.19)
食道1408 (2.2)691.45 (1.34, 1.58)
9355 (14.8)701.06 (1.03, 1.09)
大腸9637 (15.2)691.08 (1.05, 1.11)
3604 (5.7)701.03 (0.99, 1.07)
胆嚢、胆道1350 (2.1)731.04 (0.97, 1.11)
1496 (2.4)711.02 (0.95, 1.09)
喉頭549 (0.9)691.22 (1.08, 1.37)
5972 (9.4)710.97 (0.94, 1.00)
骨、軟部組織221 (0.3)661.05 (0.88, 1.27)
皮膚1035 (1.6)730.92 (0.86, 0.99)
乳房4452 (7.0)631.08 (1.03, 1.13)
子宮頸部646 (1.0)541.12 (1.00, 1.27)
子宮体部825 (1.3)600.99 (0.88, 1.11)
卵巣522 (0.8)590.98 (0.85, 1.12)
前立腺8371 (13.2)711.07 (1.05, 1.10)
1178 (1.9)661.00 (0.94, 1.07)
腎盂、尿管666 (1.1)721.06 (0.96, 1.17)
膀胱3292 (5.2)711.04 (1.00, 1.08)
脳、中枢神経系383 (0.6)640.93 (0.80, 1.07)
甲状腺656 (1.0)620.92 (0.82, 1.03)
悪性リンパ腫2177 (3.4)691.02 (0.96, 1.08)
多発性骨髄腫469 (0.7)710.89 (0.79, 1.01)
白血病616 (1.0)691.01 (0.91, 1.11)