「化学療法による悪心・嘔吐」の新しい制吐療法

文:がん+編集部

 がん化学療法による悪心(吐き気)・嘔吐を抑える新たな制吐療法の有用性が、治験で明らかになりました。

遅発期の嘔吐完全抑制割合を10%以上改善

 国立がん研究センターは2019年12月12日、化学療法による悪心(吐き気)・嘔吐(吐くこと)を抑える新たな制吐療法の有用性を、医師・薬剤師主導の第3相ランダム化比較試験J-FORCE試験で明らかにしたと発表しました。静岡がんセンターと国立がん研究センター中央病院を中心とした全国30施設の研究グループによるものです。

 J-FORCE試験は、全国30施設でシスプラチンを含む化学療法を初めて開始した、肺がん、食道がん、子宮がんなどの患者さん710人を対象として行われた臨床試験です。現在の標準的な制吐療法「セロトニン受容体拮抗薬とニューロキニン1受容体拮抗薬、ステロイドの3剤併用」に非定型型抗精神病薬オランザピン5mgを上乗せする併用用法を、プラセボの上乗せと比較しました。評価は、急性期、遅発期、全期間の3つの指標における、遅発期の嘔吐完全抑制割合で行われました。また、悪心・嘔吐の改善効果に加え、オランザピンの副作用である眠気が日中に残っていないか、逆に副作用の眠気でよく眠れているか、オランザピンの食欲増進効果により食欲低下に差があるかなど、患者さんに症状日誌を記録してもらいました。

 その結果、遅発期の嘔吐完全抑制割合は、オランザピン併用群79%、プラセボ群66%で10%以上の改善を示しました。急性期の悪心・嘔吐抑制割合を除くすべての評価項目でも、オランザピンが有意に良い成績で、嘔吐もなくかつ救済治療なしで過ごせる割合が改善し、悪心の程度についても改善効果が確認されました。

 日中の眠気に関しては、オランザピン群とプラセボ群で大きな差はなく、良眠の頻度はむしろオランザピン群が高いという結果でした。食欲低下は、オランザピン群がプラセボ群に比べ、有意に低い結果で、食欲低下も軽減する効果が示されました。

 シスプラチンは催吐性リスクが90%以上と高く、現在の標準的な制吐療法では急性期(24時間以内)の嘔吐完全抑制割合は90%であるものの、24時間以降の遅発期では65%に低下するため、持続的な抑制効果の維持が課題でした。今回の研究によって、オランザピンによる翌朝の眠気やふらつきを抑えながら、高い悪心・嘔吐抑制効果を確認できたことにより、この制吐療法が新たな標準的な制吐療法として国際的に採用されることが期待されます。