膵臓がんの進行を食い止める目印を発見

文:がん+編集部

 膵臓がんの増殖、浸潤、進行を食い止める物質の目印が発見されました。膵臓がんの早期診断と進行を抑制する、新たな治療法の開発が期待されます。

「ガングリオシドGM2」を標的とした膵臓がんの早期診断法の開発に期待

 東京都健康長寿医療センターは2019年12月25日、細胞表面の糖脂質の1種である「ガングリオシドGM2」が膵臓がんの増殖、浸潤、進行度と関連していることを発見したことを発表しました。同センターの石渡俊行研究部長、豊田雅士研究副部長、佐々木紀彦係長級研究員らと東海大学医学部の平林健一准教授、日本獣医生命科学大学の道下正貴准教授らの研究グループによるものです。

 全国がんセンター協議会の生存率共同調査KapWeb(2017年5月集計)によると2006~2008年に診断を受けた膵臓がん患者さんの半数以上が、ステージ4となっています。発見されたときは、すでに浸潤・転移していることが多く、手術を受けられる患者さんは20%程度といわれています。そのため、膵臓がんの早期診断法が求められています。

 細胞表面にある糖脂質のガングリオシドは、細胞の種類や細胞の状態によって発現が異なることなり、目印としての役割に加え、シグナル伝達の制御、細胞機能に関わる重要な表面分子ですが、ガングリオシドの1種であるGM2と膵臓がんの発現との関りは不明でした。

 研究グループは、GM2の発現を8種類のヒト膵臓がん培養細胞で調べたところ、GM2 陽性の膵臓がん細胞は、GM2陰性細胞よりも増殖が速く、GM2陰性膵臓がん細胞を培養すると、大部分のがん細胞がGM2を発現するようになり、がん幹細胞との関連が示唆されました。また、GM2の発現を抑制することで、膵臓がん細胞の浸潤を阻害することができました。発症年齢が若い、腫瘍径が大きい、病期が進行、組織学的な悪性度が高いヒト膵臓がん患者さんで、有意にGM2の発現が増加していました。

 研究グループは、今回の発見に関して「研究の意義と展望」として、次のように述べています。

 「本研究では、世界で初めてガングリオシドGM2ががん幹細胞を含むヒト膵臓がん細胞およびヒト膵臓がん組織で発現していることを見出し、膵臓がんの増殖、浸潤、進行度と関連することを明らかにしました。GM2が膵臓がん細胞の表面に発現していることから、GM2を標的とした膵臓がんの早期診断法の開発に繋がることが期待されます。さらに、光免疫療法などの細胞表面抗原を利用した新たな膵臓がん治療にもGM2が役立つと考えられます」