膵臓がんの転移を促進する“スイッチ”を発見

文:がん+編集部

 膵臓がんの転移を促進するスイッチが発見されました。膵臓がん治療の新たな治療標的となる可能性があります。

悪性度の高い膵臓がんで、BACH1タンパク質の働きが亢進

 東北大学は1月9日、「BACH1」と呼ばれるタンパク質が、膵臓がんの転移を促進するスイッチとなっていることを解明したと発表しました。同大大学院医学系研究科生物化学分野の五十嵐和彦教授らの研究グループによるものです。

 膵臓がんをはじめとするさまざまながんで、複数の遺伝子変異が組み合わさり細胞増殖能が上昇していることが知られていました。しかし、がんの転移と遺伝子変異の関係はないと報告されてきました。今回の研究により、転移能力が高い膵臓がん細胞で、遺伝子の働きを調節するタンパク質(転写因子)の1つBACH1の働きが亢進していることを発見しました。

 さらに、がんの転移を模した実験条件下で、BACH1の働きを低下させると膵臓がんの転移も低下することが明らかになりました。逆にBACH1の働きを上昇させると、がんの転移も亢進することから、膵臓がんでは、BACH1の働きが上昇することで、がん細胞が原発巣から血管やリンパ管などを伝わり移動することで転移すると考えられます。BACH1を検出する抗体を作成し、同大学病院の膵臓がん患者さんの検体を用いて調べた結果、BACH1の量が高いと治療経過が悪くなることも見出されました。

 今回の発見により、膵臓がんの病態の解明や治療法の開発がさらに進むこと、また、肺がんなど他のがん種でもBACH1が重要な要因という報告もあり、がんの転移そのものの理解が進むことも期待されます。