胃切除により腸内環境が変化、大腸がんとの関連も

文:がん+編集部

 胃切除後の患者さん、特に胃を全摘出した患者さんでは、大腸がんに関連する細菌や代謝物質の量が相対的に多いことが確認されました。

胃切除後は、定期的な大腸内視鏡検査が重要になる可能性も

 東京工業大学は1月17日、健常者と胃切除術を受けた患者さんを比較し、胃切除術後の患者さんに特徴的な腸内細菌叢やその機能、代謝物質の変化を明らかにしたと発表しました。同大生命理工学院生命理工学系の山田拓司准教授と大阪大学大学院医学系研究科の谷内田真一教授、慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授、国立がん研究センター中央病院内視鏡科の斎藤豊科長らの研究グループによるものです。

 研究グループは、国立がん研究センター中央病院で大腸内視鏡検査を受けた106人を対象に、生活習慣に関するアンケートを実施。凍結便、大腸内視鏡検査の所見などの臨床情報を収集し解析しました。106人のうち胃切除した50人と健常者56人の腸内細菌叢を比較し、胃切除後の患者さんの特徴的な細菌や代謝物質を探索したところ、胃切除に伴う消化管の再建が患者さんの腸内環境に大きな影響を与えていることが明らかになりました。

 胃切除後は、栄養障害、貧血、下痢、ダンピング症候群(胃切除後に、胃内の食物が急速に小腸に流れ込んでしまうために生じる一連の症状)などを起こすことが多く、ビタミンB12が小腸で吸収されにくいことも知られています。今回の解析でも、腸内細菌の代謝機能の変化、また、ビタミンB12が小腸で吸収されず大腸に至り、ビタミンB12の摂取能力を持つ細菌が増加していることが観察されました。

 また、原発がんの6か月以上後に発生する「異時性大腸がん」の発症リスクが、胃がん患者で高いという報告もあります。このがんは、通常の大腸がんとは発がんメカニズムが異なる可能性があるといわれています。本研究では、大腸がんと関連する細菌の種類や代謝物質が、胃の切除後に多いことが観察され、特に胃を全摘した患者さんでは、この細菌の量が多いことも確認されました。

 今回の研究結果は、胃を切除した患者さんの定期検査の重要性を示しており、便検体を用いた腸内環境の評価は今後、胃切除後の低栄養や貧血などの併発症の要因を解析する非侵襲な手法としての応用が期待されます。

 研究グループは、今後の展開として次のように述べています。

 「本研究では、胃切除後の病態メカニズムを腸内環境の変化という観点から検討しました。その成果は、胃切除だけではなく、他の疾患の治療後の長期的な併発症にも応用可能なフレームワークの可能性を示しています。また、本研究成果は、胃切除後の患者に定期的に大腸内視鏡検査を行って、異時性大腸がんの発生を早期に発見する必要性がある可能性を示唆しています。本研究で明らかになった知見は、便検体を用いた腸内環境の観点から、胃切除後の低栄養や貧血などの病態を理解し、今後、その病態を非侵襲的に評価する手法として応用される可能性や、術後の栄養状態の改善などに腸内細菌の観点から介入し、それらを改善する医薬品や健康食品などを生み出す可能性があります」