難治性子宮体がんに対する「プラズマ治療」という新規治療開発の可能性
2020/03/02
文:がん+編集部
複数の子宮体がん細胞に対しプラズマ活性溶液を投与することで、子宮体がん細胞の増殖を抑制し、細胞死を誘導する新たなメカニズムが発見されました。
進化したプラズマ活性溶液の開発を目指し、新規治療法の確立に向け研究中
名古屋大学は2月12日、「プラズマ活性溶液」を用いて、子宮体がん細胞の増殖抑制と細胞死を誘導し、そのメカニズムを解明したことを発表しました。同大医学部附属病院産科婦人科の芳川修久病院助教、同大大学院医学系研究科産婦人科学の梶山広明准教授、吉川史隆教授の研究グループと、同大学医学部附属病院先端医療開発部先端医療・臨床研究支援センターの水野正明センター長・病院教授および同大低温プラズマ科学研究センターの堀勝センター長・教授らとの共同研究によるものです。
早期に診断された子宮体がんは一般的に予後良好ですが、進行または再発の場合は、予後不良といわれています。「腹膜播種」(腹膜の表面にがん細胞が散布され、生着した状態のこと)を伴う進行・再発子宮体がんへの新しい治療法が期待されています。
最近の研究で、大気圧低温プラズマをがん組織に直接照射、または、プラズマを照射した溶液「プラズマ活性溶液」が、卵巣がんや膵臓がんなどいくつかのがん種に対して、抗腫瘍効果があると報告されています。
研究グループは、子宮体がんに対するプラズマ活性溶液の抗腫瘍効果を明らかにするため、複数の子宮体がん細胞に対して、プラズマ活性溶液を投与。結果、子宮体がん細胞の増殖抑制や細胞死を誘導することに成功しました。これは、プラズマ活性溶液の濃度と投与時間と相関していることもわかりました。また、プラズマ活性溶液による抗腫瘍効果メカニズムも解明されました。
研究グループは、今後の展開として次のように述べています。
「本研究成果により、プラズマ活性溶液による子宮体がん治療への新たな有用性が示されました。新規治療法確立に向けては、更なる治療効果の向上や安全性などの評価が必要となります。今後、子宮体がんに苦しむ患者さんへの新規治療法として、プラズマの臨床応用を実現するために、今回用いた培養液に変わる新たなプラズマ活性溶液の開発も我々の研究グループで進めています。これまで集積した知見をより深めつつ、進化したプラズマ活性溶液の開発を目指し、新規治療法の確立に一歩ずつ近づきたいと考えています」