HPVワクチンの積極的勧奨中止で、1万人超が子宮頸がんによる死亡と予想

2020/03/03

文:がん+編集部

 子宮頸がん予防のためのHPVワクチンの「積極的勧奨の中止」により、防ぐことのできた子宮頸がんの罹患者数と失われた命の推定が発表されました。

子宮頸がん根絶には、HPVワクチン接種と検診率の上昇が必要

 北海道大学は2月18日、日本での子宮頸がん予防HPVワクチンの「積極的勧奨の中止」による影響を定量化し、ワクチンの「積極的勧奨の中止」を行わなかった場合に、子宮頸がんへの罹患を防ぐことができたと予想できる患者数と、そのために失われた命について推定される具体的な数字を発表しました。同大大学院医学研究院のSharon Hanley特任講師、Cancer Council New South WalesのKaren Canfell教授らの研究グループによるものです。

 2009年10月、HPVワクチンは日本でも承認され、2013年4月に定期接種化されました。接種後に痛みやけいれんなどの多様な症状を訴える声が相次ぎ、2か月後にワクチン接種に関する積極的勧奨が中止されました。その後、ワクチンと症状は無関係とする数多くの研究成果が出ていますが、現在も6年半にわたり「積極的勧奨の中止」は継続されています。

 2013~2019年の間のHVPワクチンの積極的勧奨の中止により、接種率は1%未満。研究グループが、接種率が70%に維持された場合と現状の1%未満を比較したところ、1994~2007年の間に生まれた女性のうち2万4,600~2万7,300人が罹患し、5,000~5,700人が死亡すると予測しました。

 また、今後50年間では、5万5,800~6万3,700人が罹患し、9,300~1万800人が死亡すると推定されています。積極的勧奨の中止が長期化し、接種率1%未満の現状と同じ場合、現在12歳の女性だけでも3,400~3,800人が罹患し、700~800人が死亡するとしています。

 積極的勧奨が開始と9価ワクチンが承認され、12~20歳の女性の接種率が2020年中に50~70%に回復できた場合、推定死亡数の80%の命を救うことができると推定されます。WHOが目指す「子宮頸がんの10万人当たり4人以下」という目標を達成するには、HVPワクチンの接種率の回復とともに、2095年までの検診率の上昇が必要としています。

 積極的勧奨は中断されていますが、定期接種の位置づけに変わりはなく公費助成により摂取することができます。