スキルス胃がんの原因遺伝子と治療標的分子を特定

2020/04/24

文:がん+編集部

 今まで解明されていなかったスキルス胃がんの原因遺伝子と治療標的分子が特定されました。

スキルス胃がんの治療薬としてラパマイシンが有用な可能性

 大阪市立大学は4月3日、スキルス胃がんの原因変異遺伝子として「STK11/LKB1」を特定し、治療薬として「STK11/LKB1」関連シグナル系を制御する薬剤「ラパマイシン」が有用である可能性を明らかにしたと発表しました。同大大学院医学研究科癌分子病態制御学・消化器外科学の八代正和研究教授、西村貞德大学院生・医師らの研究グループによるものです。

 胃がんは、胃の壁の内側の粘膜細胞に発生し、がんが大きくなるにつれて、徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜へと外側に深く進んでいきます。スキルス胃がんは、胃の壁を硬く厚くして広がっていくため、内視鏡検査で早期に発見することが難しく、進行した状態で見つかることが多いです。

 研究グループは、スキルス胃がんの細胞株6株を用いて遺伝子解析を試みたところ、6株中3株でがん抑制遺伝子「STK11/LKB1」の変異を見つけました。さらに、同遺伝子の変異を詳しく調べると、STK11/LKB1変異型スキルス胃がん細胞では、STK11/LKB1タンパク質発現の減弱や機能喪失も確認されました。胃がん細胞株にSTK11/LKB1関連シグナル系を制御するラパマイシンを作用させたところ、スキルス胃がん細胞の増殖が抑制されました。

 スキルス胃がんの原因遺伝子と治療標的分子が世界で初めて解明されました。この研究成果により、スキルス胃がんの治療が大きく前進することが期待されます。