キイトルーダ+化学療法併用、転移性トリプルネガティブ乳がんに対する治験で無増悪生存期間を延長
2020/06/10
文:がん+編集部
ペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)と化学療法併用療法が、PD-L1発現が認められる転移性トリプルネガティブ乳がんに対する治験で、無増悪生存期間を有意に延長しました。
KEYNOTE-355試験の中間解析では、病勢進行または死亡リスクを35%低減
米メルク社は5月13日、転移性トリプルネガティブ乳がんに対する初回治療として、ペムブロリズマブと化学療法との併用療法を評価した第3相KEYNOTE-355試験の結果を発表しました。
KEYNOTE-355試験は、転移に対する化学療法歴のない手術不能な局所再発または転移性のトリプルネガティブ乳がんでPD-L1陽性および全患者さんを対象とした臨床試験です。ペムブロリズマブと化学療法1剤との併用療法と、プラセボと化学療法1剤を比較して、主要評価項目の無増悪生存期間と全生存期間、副次的評価項目の奏効率と奏効期間、病勢コントロール率、安全性で評価されました。
併用する化学療法薬は、治験責任医師の選択により、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンから1剤が選択されました。
中間解析の結果、PD-L1陽性(CPS※≧10)の患者さんにおいて、ペムブロリズマブと化学療法との併用療法で、無増悪生存期間を統計学的に有意に、かつ臨床的に意味のある延長が認められ、病勢進行または死亡リスクを35%低減しました。PD-L1の発現がCPS≧1の患者さんでも無増悪生存期間の延長は示されましたが、統計学的に有意な延長とは認められませんでした。全生存期間の評価は、引き続き行われます。
同社の研究開発本部シニアバイスプレジデント、グローバル臨床開発責任者でチーフメディカルオフィサーのRoy Baynes博士は、次のように述べています。
「KEYNOTE-355試験で認められた無増悪生存期間の結果は、特定の転移性トリプルネガティブ乳がん患者さんの初回治療に大きく貢献できる可能性を示しています。当社は、キイトルーダを中心として乳がんのさまざまな治療セッティングや病期における革新的な治療アプローチの評価に取り組んでいます。第3相KEYNOTE-355試験や術前・術後の補助療法を評価するKEYNOTE-522試験でトリプルネガティブ乳がんの治療においてキイトルーダと化学療法の併用療法が効果的である可能性が示されており、良好な結果を心強く思っています」
また、Quironsalud GroupのIOB Institute of Oncologyで乳がんプログラムの責任者を務めるJavier Cortes博士は、次のように述べています。
「進行の速い転移性トリプルネガティブ乳がん患者さんに対する治療レジメンには大きなニーズが存在しています。本試験の結果から、キイトルーダと化学療法の併用療法が承認されれば、特定の女性患者さんにとって初回治療の新たな選択肢となり得る可能性が示されています」
※CPS(Combined Positive Score)は、全腫瘍細胞数中のPD-L1陽性腫瘍細胞とPD-L1陽性免疫細胞の割合