EGFR-TKIの治療抵抗性の肺がんに対し、新たな治療法を開発

文:がん+編集部

 EGFR遺伝子変異陽性の肺がんで、治療薬のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)が早期に効かなくなった患者さんに対し、新たな治療法が開発されました。

AXL高発現の肺がんの場合、AXL阻害薬とEGFR-TKIを最初から併用で高い治療効果となる可能性

 京京都府立医科大学は5月21日、EGFR遺伝子変異を有する肺がんの新規治療法を開発し、研究成果が「Clinical Cancer Research」に掲載されたことを発表しました。同大大学院医学研究科呼吸器内科学の山田忠明病院准教授、髙山浩一教授らの研究グループによるものです。

 EGFR遺伝子変異がある非小細胞肺がん患者さんに対するEGFR-TKIによる治療は、高い確率で奏功します。しかし一部のがん細胞では、薬による細胞死を免れて生き残り、新たな耐性を獲得した「治療抵抗性細胞」が存在し、再発が起こることが問題となっています。

 研究グループはこれまでに、治療抵抗性細胞が生き残る原因として、普段は眠っている「AXL」というタンパク質が、EGFRやHER3という別のタンパク質と一緒になることで活性化し、がん細胞が生き延びるための刺激を維持していることを明らかにしてきました。

 今回の研究では、EGFR遺伝子変異のある肺がん細胞株を移植したマウスモデルに対し、AXLを抑制する「ONO-7475」(臨床開発中)を、新世代のEGFR-TKI(オシメルチニブやダコミチニブ)と併用する実験が行われました。その結果、がん細胞をほぼ死滅させ、再発を顕著に遅らせることができるとわかりました。また、ONO-7475とEGFR-TKIを最初から併用するほうが、新世代のEGFR-TKIで治療抵抗性が起こった後に併用するより、高い治療効果が得られることもわかりました。

 さらに、治療前の肺がん患者さんのがん細胞を調べた結果、AXLタンパク質が多く作られている患者さんは、少ない患者さんと比較してEGFR-TKIの治療成績が悪いことがわかりました。一方、EGFR-TKIの治療効果がなくなった後の患者さんのがん細胞においてAXLタンパク質を調べたところ、AXLタンパク質が作られている数は、治療成績にあまり影響しないこともわかりました。

 こうした結果から、AXLタンパク質を多く作っている患者さんに対しては、最初からEGFR-TKIとAXL阻害薬を併用して治療を行うことが有効であり、治療抵抗性となった後で使用しても効果は期待できないと考えられます。

 今後の展開と社会へのアピールポイントとして、研究グループは次のように述べています。

 「本研究で使用したAXL阻害薬ONO-7475は現在、早期臨床試験が日米で進められています。今後は、EGFR遺伝子変異を有する肺がん患者さんのうち AXLタンパク質が高発現している方を対象に、新世代EGFR阻害薬オシメルチニブやダコミチニブと併用する臨床試験を行い、効果や安全性について評価していきたいと考えています。治療効果が乏しい肺がん患者さんの治療成績を向上させることができれば社会に大きく貢献できます」