腹膜転移を伴うステージ4の膵臓がんに対する新治療法、臨床試験で有効性と安全性を確認

文:がん+編集部

 腹膜転移を伴うステージ4の膵臓がんに対する新たな治療法が考案され、有効性と安全性を評価する臨床試験を実施。大きな副作用はなく、高い治療効果が得られました。

第2相試験で奏効率49%、病勢コントロール率95%という高い治療効果を示す

 関西医科大学は7月6日、腹膜転移を伴う膵臓がんに対し、ゲムシタビン・ナブパクリタキセル療法に加え、パクリタキセルを直接腹腔内に投与する新しい治療法を考案し、臨床試験により有効性と安全性が確認できたことを発表しました。同大外科学講座の里井壯平診療教授、名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学の小寺泰弘教授、山田豪講師、富山大学の藤井努教授らを中心とした研究グループによるものです。

 膵臓がんは、70~80%の患者さんが診断時には切除不能といわれています。その中でも「腹膜転移」を伴う膵臓がんでは、腹水や腸閉塞をきたしていることが多く、低栄養や全身状態の悪化により治療機会を失う患者さんもいます。そこで研究グループは、遠隔転移を伴う膵臓がん患者さんに対する標準治療であるゲムシタビンとナブパクリタキセル併用療法に、パクリタキセルの腹腔内投与を組み合わせる新規治療法を考案し、有効性と安全性を評価する臨床試験を行いました。

 この臨床試験は、第1相と第2相の2つのフェーズで構成されました。第1相では10人の患者さんに対し「用量規制毒性」を評価することで、抗がん剤の推奨用量の設定を行い、第2相では46人の患者さんに対し有効性と安全性を評価しました。

 第2相試験の結果、治療成功期間(中央値)は6.0か月、原発巣で平均20%の縮小が認められ、腫瘍マーカーは84%低下し、正常値まで低下した患者さんも26%いました。奏効率は49%、病勢コントロール率は95%と高い治療効果が得られました。また、がん性腹水に関しては、40%の患者さんで消失し、腹水中のがん細胞は39%で陰性になりました。この治療法により、腹膜転移が消失して最終的に膵臓がんの切除まで行えた患者さんは17%で、切除できなかった患者さんと比較して明らかに良好で、生存期間中央値は14.5か月、1年生存割合は61%でした。この治療法の血液学的な副作用は76%、非血液学的な副作用は15%と高めでしたが、治療中に大きなトラブルもなく管理可能でした。

 今後の展開として研究グループは、次のように述べています。

 「この試験により、これまで有効な治療法がなかった腹膜転移を伴う膵臓がん(ステージ4)に対して、ゲムシタビン・ナブパクリタキセル療法とパクリタキセル腹腔内投与併用療法は臨床的に有効であり、安全性も検証されました。S-1という内服抗がん剤は本邦で開発されましたが欧米ではあまり使用されていません。したがって、前試験のようにS-1を使用できない国や地域でもこの治療法が利用できることはメリットです。以上の結果をふまえ、現在われわれは国内多施設共同第3相試験として、この腹腔内投与と標準療法の比較試験を遂行しておりますが、難治性膵がんの治療成績のさらなる向上に寄与すると考えられます」