小児悪性脳腫瘍「膠芽腫」の悪性化に、BCOR遺伝子変異がかかわることを発見

文:がん+編集部

 小児の悪性脳腫瘍の1つ「膠芽腫」で、BCOR遺伝子変異が悪性化にかかわることが発見されました。

BCOR遺伝子変異、さまざまながんに対する分子診断マーカーとして期待

 国立精神・神経医療研究センターは8月20日、小児の悪性脳腫瘍の1つである「膠芽腫」において、BCOR遺伝子でみられる傷(変異)が、悪性化にかかわることを発見したことを発表しました。同センター神経研究所病態生化学研究部 川内大輔室長の研究グループによるものです。

 研究グループは、小児の小脳に生じる膠芽腫で、ヒトBCOR遺伝子が高頻度で傷ついていること(変異)に着目。この遺伝子変異が腫瘍の形成に与える影響について、膠芽腫を発症している動物モデルを作出して解析を行いました。

 その結果、BCOR遺伝子の機能を阻害した動物モデルでは、細胞増殖を刺激する「インスリン様成長因子2(IGF2)」の発現が高まり、がんの進展が加速することがわかりました。さらに分子レベルでの解析から、BCOR遺伝子が傷つくことでIGF2が抑制されないこと、他の脳腫瘍や一部の肉腫でもIGF2が高発現していることを見出しました。

 BCOR遺伝子変異は、髄芽腫に限らずさまざまながんに対して、分子診断マーカーとして役立つことが期待されます。

 研究グループは、研究の意義と今後の展望として次のように述べています。

 「脳腫瘍の化学療法は、腫瘍細胞が増えるメカニズムに応じて治療薬を使い分けていく戦略が効果的であると期待されています。今回の研究成果は、BCORのC末端が機能不全である髄芽腫で誘導されるがんシグナルとしてIGF2を特定した点で、大きな意義があります。一方でIGF2の発現を積極的に亢進させる遺伝子変異や分子メカニズムは未だはっきりしておらず、その分子機構を明らかにすることで、さらに正確にIGF2がんシグナルの診断が可能になるものと思われます。今回の研究成果は、髄芽腫の治療法を検討する際の分子診断マーカーとしてだけでなく、BCOR遺伝子に変異を持つ他のがんの増殖メカニズムをより深く理解するための手助けとなることが期待されます」