核酸医薬品「SRN-14/GL2-800」、切除不能・転移性再発乳がんを対象とした第1相医師主導治験を開始

2020/09/30

文:がん+編集部

 治癒切除不能または遠隔転移のある再発乳がんで、化学療法が適応となる患者さんに対し、siRNA核酸医薬品候補である乳がん治療薬「SRN-14/GL2-800」の第1相の医師主導治験が開始されました。

「SRN-14/GL2-800」、トリプルネガティブ乳がんの半数以上で発現する「PRDM14分子」を標的とした核酸医薬品

 がん研究科有明病院は9月2日、乳がん患者さんに対するPRDM14を標的とした核酸医薬品候補である乳がん治療薬「SRN-14/GL2-800」を評価する医師主導第Ⅰ相試験(ヒトに対して初めて投与する試験)を開始したことを発表しました。

 この試験は、安全性および薬物動態、薬効を評価する臨床試験です。SRN-14/GL2-800の最も適した投与量を調べるために「用量漸増法」により行われます。

 乳がんでは、ホルモン受容体(エストロゲン受容体:ER、プロゲステロン受容体:PgR)、HER2タンパク質、がん細胞の増殖活性「Ki67値」の3つの要素により治療選択が行われます。ER陰性、PgR陰性、HER2陰性のトリプルネガティブ乳がんホルモン療法の効果がなくなった遠隔転移のある乳がん患者さんについては、BRCA遺伝子変異のある患者さんに対するPARP阻害薬以外に有効な分子標的薬がないのが現状です。

 SRN-14/GL2-800は、同病院と東京大学医科学研究所、札幌医科大学、川崎市産業振興財団、ナノ医療イノベーションセンター、慶應義塾大学病院およびナノキャリア株式会社が共同で研究してきた、世界初のPRDM14分子に対するキメラ型siRNA4とそのナノキャリアから構成される化合物です。PRDM14分子はヒトの正常細胞にはほぼ発現のない分子ですが、トリプルネガティブ乳がんの半数以上の患者さんで発現が高いことがわかっています。PRDM14分子は細胞の核で発現するため、標的とする低分子化合物や抗体の開発は容易ではありませんが、今回、遺伝子配列情報から開発が可能な核酸医薬品として開発されました。

※核酸医薬とは、DNAやRNAなどの「核酸」を基本骨格とする医薬品。主な標的は疾患に関わる「タンパク質の合成」部分で、タンパク質を標的としている従来型の医薬品とは異なります。