肺がんの新たな治療薬候補に関する2つの臨床試験データ、ESMOで発表
2020/10/27
文:がん+編集部
肺がんに関する2つの臨床試験データが欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会2020で発表されました。1つは、ALK陽性の非小細胞肺がんの一次治療として、ブリグチニブ(製品名:アルンブリグ)を評価したALTA1L試験のサブ解析結果です。もう1つは、EGFRエクソン20挿入変異を伴う転移性の非小細胞肺がんに対してモボセルチニブ(開発コードTAK-788)を評価した第1/2相試験の10か月の追跡調査の結果です。
アルンブリグ、ALK陽性非小細胞肺がんの一次治療として頭蓋内病変に対し高い有効性
武田薬品工業は9月18日、肺がん治療における新たな臨床試験データをESMOで発表しました。今回発表されたデータは、ブリグチニブを評価した第3相ALTA1L試験のサブ解析結果と、モボセルチニブを評価した第1/2相試験の10か月の追跡調査結果です。
ALTA1L試験は、ALK阻害薬による前治療歴のないALK陽性の局所進行または転移性の非小細胞肺がんの成人患者さんを対象にした臨床試験です。ALK阻害薬のクリゾチニブ(製品名:ザーコリ)とブリグチニブを比較して安全性と有効性が評価されました。サブ解析の結果、頭蓋内病変に対し高い有効性とQOLの改善が認められました。
ブリグチニブ投与による重篤な有害事象の発現率は33%。主な有害事象は、肺炎(4.4%)、間質性肺炎/肺臓炎(3.7%)、発熱(2.9%)、呼吸困難(2.2%)、肺塞栓症(2.2%)、無力症(2.2%)でした。致死的な有害事象は2.9%で発生し、肺炎(1.5%)、脳血管障害(0.7%)、多臓器不全症候群(0.7%)でした。
主なサブ解析の結果は以下の通りです。
頭蓋内病変の病勢進行までの期間(中央値)
ブリグチニブ:24か月
クリゾチニブ:5.6か月
脳放射線治療を受けたことがない患者さんの無増悪生存期間(中央値)
ブリグチニブ:24か月
クリゾチニブ:5.5か月
治療前から脳転移があった患者さんの悪化までの期間
ブリグチニブ:16.6か月
クリゾチニブ:7か月
モボセルチニブを評価した第1/2相試験は、EGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がん患者さんを対象に、モボセルチニブ1日1回160mgを投与し、有効性と安全性を評価した臨床試験です。10か月の追跡調査の結果、1年以上の奏効期間を達成し、既報の結果と同じく良好なデータが示されました。25%以上で認められた主な有害事象は、下痢(89%)、食欲減退(54%)、嘔吐(54%)、発疹(46 %)、悪心(46%)および貧血(36%)でした。
主な解析結果は以下の通りです。
奏効期間(中央値):13.9か月
奏効率:43%
無増悪生存期間(中央値):7.3か月