エンハーツ、「がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がん」の適応で国内承認

2020/11/09

文:がん+編集部

 HER2に対する抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(製品名:エンハーツ)が、「がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がん」の適応で、国内承認されました。

DESTINY-Gastric01試験で、エンハーツは化学療法に比べ死亡リスクを41%低減

 第一三共は9月25日、HER2に対する抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカンについて、「がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がん」の効能または効果、用法および用量追加に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表しました。第2相DESTINY-Gastric01試験および日米共同第1相臨床試験の結果に基づくものです。

 DESTINY-Gastric01試験は、日本と韓国で実施された第2相臨床試験です。2回以上の治療で増悪が認められたHER2陽性の進行・再発胃がんまたは胃食道接合部がん患者さんを対象に、トラスツズマブ デルクステカンと化学療法(イリノテカンまたはパクリタキセル)が比較されました。主要評価項目は奏効率、副次的評価項目は全生存期間などでした。

 試験の結果、トラスツズマブ デルクステカンは化学療法に比べ、統計学的有意にかつ臨床的に意義の高い改善を示しました。また、トラスツズマブ デルクステカンは、化学療法と比べ死亡リスクを41%低減させました。

 同社は、今回の承認取得に際し次のように述べています。

 「がん治療における新たな治療の選択肢を提供することで、患者さんに貢献できるものと期待しております」

製品概要

販売名エンハーツ®点滴静注用100mg
一般名トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)
効能又は効果
(追加内容下線部)
・化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)
・がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌
用法及び用量
(追加内容下線部)
<化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)> 通常、成人にはトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回5.4mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。
<がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌>
通常、成人にはトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回6.4㎎/㎏(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。
承認条件1. 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
2. 化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌患者を対象に実施中の第Ⅲ相試験における本剤の有効性及び安全性について、医療現場に適切に情報提供すること。
3. 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤の使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
一部変更承認日2020年9月25日
製造販売元第一三共株式会社

※下線部が、追加変更箇所