肺がん細胞が分子標的薬に抵抗するメカニズムを解明
2020/11/12
文:がん+編集部
肺がん細胞が分子標的薬に抵抗するメカニズムが解明されました。インスリン様増殖因子1受容体(IGF-1R)のタンパク質量を増やすことで、分子標的薬に対し抵抗性を獲得するというメカニズムです。
動物実験では、EGFR-TKIとIGF-1R阻害薬併用で、ほぼ再発を防ぐことに成功
金沢大学は10月5日、分子標的薬にさらされた肺がん細胞が、IGF-1Rのタンパク質量を増やすことで、抵抗し生き延びることを初めて明らかにしたと発表しました。同大がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所の矢野聖二教授、がん進展制御研究所/新学術創成研究機構の鈴木健之教授、京都府立医科大学の山田忠明病院准教授らの共同研究グループによるものです。
日本人の肺がんの約 20%を占める、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに対する治療薬として、オシメルチニブ(製品名:タグリッソ)という分子標的薬が有効ですが、一部のがん細胞が耐性を獲得することで再発することが問題となっています。
研究グループはこれまでに、EGFR遺伝子変異陽性肺がんのうち「AXL」(アクセル)というタンパク質が高発現しているがん細胞でオシメルチニブの効果が少ないこと、その原因としてAXLが生存シグナルを補い抵抗性細胞を生み出していることを解明していました。
今回、研究グループはAXL低発現のEGFR遺伝子変異陽性の肺がん細胞を解析。オシメルチニブにさらされたがん細胞の一部で、転写因子「FOXA1」がIGF-1Rのタンパク量を増やすことで、生存シグナルを補いがん細胞の一部が抵抗性を獲得していることを解明しました。さらに、動物実験で、分子標的薬にIGF-1R阻害薬を短期間併用することで、肺がん細胞をほぼ死滅させ、ほぼ再発を防ぐことに成功しました。
研究成果は、肺がんを根治させる治療につながることが期待されます。