リムパーザ、進行卵巣がん、前立腺がん、膵臓がんの治療薬として国内承認
2021/01/22
文:がん+編集部
オラパリブ(製品名:リムパーザ)が、進行卵巣がん、前立腺がん、膵臓がんの治療薬として国内承認されました。
リムパーザ、前立腺がん/膵臓がんに対して承認された国内初のPARP阻害薬
アストラゼネカとMSDは2020年12月28日、オラパリブが3つのがん種(進行卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん)で、厚生労働省から承認を取得したことを発表しました。今回の承認は、進行卵巣がんがPAOLA-1試験、前立腺がんがPROfound試験、膵臓がんがPOLO試験のそれぞれの結果に基づくものです。
PAOLA-1試験では、HRD陽性進行卵巣がん患者さんに対する解析の結果、「オラパリブ+ベバシズマブ(製品名:アバスチン)」併用療法による維持療法が、ベバシズマブと比べて、無増悪生存期間を大幅に延長しました。
PROfound試験では、BRCA1/2遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんに対する解析の結果、オラパリブは、エンザルタミド(製品名:イクスタンジ)またはアビラテロン(製品名:ザイティガ)に比べて、無増悪生存期間と全生存期間を大幅に延長しました。
POLO試験では、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異がある治癒切除不能な膵臓がん患者さんに対する解析の結果、オラパリブはプラセボに比べて、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間の延長を示しました。
アストラゼネカの執行役員研究開発本部長の大津智子氏は、次のように述べています。
「今回の3がん種同時適応拡大により、日本の多くのがん患者さんに、バイオマーカーに基づいたリムパーザによる治療を提供できることを大変嬉しく思います。今回の承認は、治療決定におけるバイオマーカーの重要性を推し進めるものです。個別化医療がより行われることで、個々の患者さんに最適な治療選択が行われ再発・進行を大きく遅らせることを期待しています」
また、MSD副社長執行役員グローバル研究開発本部長の白沢博満氏は、次のように述べています。
「進行卵巣がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん、転移性膵がんは、いずれも大きなアンメット・メディカルニーズを伴うがんです。患者さんにとって、治療の選択肢は非常に限られてきました。リムパーザは、前立腺がんおよび膵がんに対して承認された日本初のPARP阻害剤であり、分子標的薬が新たに承認されることで、個別化医療の新たな時代をさらに前進させ、日本におけるこれらのがんの治療法が大きく変わっていくことが期待されます」
3つの適応症は、以下の通りです。
・相同組換え修復欠損を有する卵巣がんにおけるベバシズマブ(遺伝子組換え)を含む初回化学療法後の維持療法
・BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん
・BRCA遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵がんにおける白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法後の維持療法