難治性膵臓がんに対する「TUG1」を標的とした新しい治療薬の開発へ

文:がん+編集部

 膵臓がん細胞で高い発現を示し、正常な膵臓細胞では発現しないRNAの1つ「TUG1」が、膵臓がんの治療で使用される抗がん剤5-FUの耐性獲得の重要な因子となっていることを発見。TUG1を抑制する薬剤を効率的にがん細胞に届ける核酸治療薬「TUG1-DDS」を作製し、動物実験で効果が確認されました。

核酸治療薬「TUG1-DDS」と5-FUを同時投与、膵臓がん細胞を移植したマウスで効果を確認

 名古屋大学は3月2日、タンパク質に翻訳されない RNAの1つ「TUG1」を標的とした治療薬が難治性の膵臓がんに対して有効である可能性を発見したことを発表しました。同大大学院医学系研究科・腫瘍生物学分野の近藤豊教授、田﨑慶彦大学院生らの研究グループと、名古屋市立大学、東京大学、ナノ医療イノベーションセンター、がん研究会の共同研究によるものです。

 研究グループは、TUG1が膵臓がん細胞で高い発現を示す一方、正常な膵臓細胞では発現していないことに着目しました。TUG1が、膵臓がんの治療薬として使用される抗がん剤5-FUの分解を促進する働きを発揮し、 5-FUの効果を減弱することで耐性獲得に重要な役割があることを発見しました。

 次に、TUG1を抑制する薬剤をがん細胞に効率的に届けることができる核酸治療薬「TUG1-DDS」を作製し、膵臓がんを移植したマウスに5-FUと同時に投与する実験を実施。その結果、5-FUの効果が増強され膵臓がんが縮小されたことが確認されました。

 このことから、TUG1-DDSは膵臓がん細胞に対し特異的に5-FUの効果を増強するため、5-FUの正常細胞への毒性を抑えつつ、膵臓がんに対し有効な治療薬となる可能性があることが示されました。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「現在TUG1-DDSは臨床応用に向けての開発を進めています。膵臓がんに対してTUG1-DDSの使用が可能になることを目標とし、TUG1-DDSについて副作用などを含めた解析を進め、安全性について検討していく予定です」