免疫チェックポイント阻害薬による「甲状腺副作用」、発症メカニズムをマウスで解明

文:がん+編集部

 免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体による甲状腺副作用の発症メカニズムが、マウスによる研究で明らかになりました。

抗PD-1抗体による副作用メカニズムの解明と予防法の確立に繋がる成果

 名古屋大学は5月13日、免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体による甲状腺副作用の発症メカニズムをマウスで明らかにしたと発表しました。同大医学部附属病院糖尿病・内分泌内科の安田康紀医員、岩間信太郎講師、医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の有馬寛教授らの研究グループと、同大医学系研究科分子細胞免疫学の西川博嘉教授らの研究グループとの共同研究によるものです。

免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対する免疫抑制を解除することで抗がん作用を示すがん免疫治療薬です。近年、さまざまながん種で保険適用され、使用が拡大している一方で、薬剤による免疫反応の活性化が自己の臓器に影響して生じる副作用が問題となっています。このうち、甲状腺の副作用は頻度が高く、一過性の甲状腺ホルモン上昇とその後の低下を伴う「破壊性甲状腺炎」の症状が現れますが、その発症メカニズムは不明のままでした。

 研究グループは、抗PD-1抗体の投与により破壊性甲状腺炎を発症するマウスモデルを開発。次に、破壊性甲状腺炎を発症したマウスについて詳しく調べたところ、CD4陽性の「エフェクターメモリーT細胞」と「セントラルメモリーT細胞」の増加が認められました。また、CD4陽性T細胞では、細胞障害作用を示唆するタンパク質「グランザイムB」の発現を確認しました。さらに、抗PD-1抗体の投与前にCD4、CD8、CD20陽性のリンパ球をそれぞれ除去した後に抗PD-1抗体を投与したところ、CD4陽性T細胞を除去したマウスでは、破壊性甲状腺炎の発症が完全に抑制されましたが、CD8陽性のT細胞の除去では部分的な抑制でした。

 抗PD-1抗体による治療を受けた患者さんの血中リンパ球を解析したところ、破壊性甲状腺炎を発症した患者さんでは、発症していない患者さんと比べてCD4陽性の細胞傷害性T細胞の有意な増加が認められました。

 研究グループは、次のように述べています。

 「研究により、抗PD-1抗体による破壊性甲状腺炎の発症には細胞傷害作用を有するCD4陽性T細胞が必須の役割を果たしていることが明らかとなりました。この結果は、現在広く使用されている抗PD-1抗体による副作用のメカニズムの解明およびその予防法の確立に繋がる成果と考えられます」