新型コロナウイルスワクチン接種、がん患者さんの疑問に国がん中央病院が回答
2021/06/02
文:がん+編集部
がん患者さんに対する新型コロナウイルスワクチンの接種について、国立がん研究センター中央病院がQ&Aを発表しました。
ワクチンの有効性・安全性・接種時期や治療への影響など11の疑問や不安に回答
文:がん+編集部
国立がん研究センター中央病院は5月31日、新型コロナ感染症に対するワクチン接種について、がん患者さんのさまざまな疑問や不安に対してQ&Aを発表しました。
がん患者さんに対する新型コロナウイルスワクチンの有効性や安全性、抗がん剤治療中のワクチン接種時期、副反応などについて回答しています。
がんの治療中に新型コロナウイルスワクチンを接種してもよいですか?また、がんにかかっている場合、新型コロナウイルスワクチンの接種は安全ですか?
がんの治療中の方も、経過観察中の方も、接種していただいて問題ありません。がん患者さんでも新型コロナウイルスワクチンを他の人と同じように安全に受けていただけます。
がんの治療方法によっては、新型コロナウイルスワクチンの接種時期を調整した方がよいものはありますか?
がんの治療方法と新型コロナウイルスワクチンの接種時期の関係は現在のところまだよくわかっていません。ただ、新型コロナウイルスワクチンを接種するために、がんの治療を遅らせることはしないでください。基本的には新型コロナウイルスワクチンが接種できるタイミングで接種していただいて結構です。もし、新型コロナウイルスワクチンの接種時期を調整できるのであれば、新型コロナウイルスワクチンの有効性という観点からは、強い免疫抑制がかかっている時期を避けて接種を受ける選択肢もあると思います。
強い免疫抑制がかかる治療以外に接種時期の調整を考えた方が良いケースはありますか?
明らかな発熱を呈している、重篤な急性疾患にかかっていることが明らかである、接種しようとする接種液の成分に対してアナフィラキシーを呈したことが明らかである、その他の理由により予防接種を行うことが不適当な状態である、といったワクチン接種不適当者には新型コロナウイルスワクチン接種をしないことになっています。がん患者さんにもさまざまな状況の方がいらっしゃると思いますが、例えば、がんの進行などにより全身状態があまり良くないような場合や発熱が続いているような場合などには、無理に新型コロナウイルスワクチンを打つ必要はないと思います。そのような場合は主治医の先生と相談し、接種時期について慎重に判断することが大切です。
がんの治療中で免疫が低下している場合、新型コロナウイルスワクチンを接種することで、新型コロナウイルスに感染してしまうことはありますか?
新型コロナウイルスワクチンは生きた新型コロナウイルスを含むワクチンではないので、接種が原因で新型コロナウイルスに感染することはありません。
血液がんにかかった場合、特に造血幹細胞移植を受けた場合、新型コロナウイルスワクチンを接種してもよいですか?
血液がんにかかった場合でも新型コロナウイルスワクチンを接種して差し支えありません。造血幹細胞移植を受けた場合には、ガイドラインに示されている不活化ワクチンと同様のタイミングで接種を受けて良いと考えられていますが、十分なデータがないので、新型コロナウイルス感染症の流行状況を勘案した上で、主治医とよくご相談ください。
ファイザー社やアストラゼネカ社、モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンがありますが、がんにかかった場合、新型コロナウイルスワクチンの種類を選んで受けた方がよいですか?
臨床試験での新型コロナウイルスワクチン効果、有効性に関しては若干、数値的には違いがありますが、新型コロナウイルス感染症の発症を抑えるという意味では、いずれの新型コロナウイルスワクチンも同じように有効であると考えられています。最近では、発症だけではなく感染自体を抑制する効果もあるという研究結果も出てきています。
新型コロナウイルスワクチンの接種によるがん患者特有の副反応はありますか?
現時点での報告では、がん患者さんに特有の副反応が出ることは言われていません。ただ、現在の新型コロナウイルスワクチンは新しいワクチンで接種が始まったばかりです。短期的、あるいは長期的な安全性について注意深いフォローアップは必要です。
過去にワクチン接種でアレルギー反応があった場合、どのように対応すればよいですか?
どのようなワクチンでどのようなアレルギー反応があったかにもよりますが、例えば過去にワクチン接種でアナフィラキシーのような重いアレルギー反応があった場合は、十分な注意をはらった上で接種することになります。ただし接種するワクチンの成分に対してアナフィラキシーを起こしたことが明らかな場合には接種できません。
がん治療は一段落して、現在は経過観察のみになっています。新型コロナウイルスワクチンを接種する時、主治医に事前に相談してからの方がよいですか?
新型コロナウイルスワクチン接種の予診票に治療中の病気について記載するので、予診医から「かかりつけの先生に相談しましたか」と聞かれることがあります。ご心配でしたら主治医にご相談いただくのが良いと思いますが、すでにがんの治療が一段落して現在経過観察のみというような場合、新型コロナウイルスワクチン接種の判断に、主治医のコメントは必ずしも必要ないと考えます。
現在、がん治療後の経過観察も終了して、通院はしていません。新型コロナウイルスワクチンを接種する時、以前通院していた病院に事前に相談した方がよいですか?
かかりつけだった医師に相談する必要はありません。そのまま会場に行っていただいても大丈夫です。地元の接種できる医療機関・会場で接種していただくのがよいでしょう。
新型コロナウイルスワクチン接種の副反応が心配です。どのような副反応がありますか?
ほとんどの人が接種した部位の痛みを感じています。それは新型コロナウイルスワクチンに対する体の反応ため、やむをえません。接種してすぐには痛くはありませんが、あとから痛みが出てきます。また倦怠感を訴える方、熱が出る方も多く、特に2回目の接種後は頻度が高くなるようです。それも新型コロナウイルスワクチンに対する体の反応と理解していただければ良いと思いますし、多くは3日以内に軽快するので、それほど心配する必要はありません。一番注意しなくてはいけないのがアナフィラキシー症状です。頻度的には他のワクチンと大きく変わりありませんが、もともとアレルギー体質の方での発症率は高いという報告があります。もしアナフィラキシー症状が起きた場合にはアドレナリンを注射するなど適切な対応を取る必要があります。接種会場では、アナフィラキシーなどが起きた場合すぐに対応できる準備がしてありますので、安心して接種していただいて良いでしょう。接種後は、通常15分程度経過観察してから帰っていただきますが、他のワクチンでアナフィラキシーなどアレルギー症状を起こしたことがある方は30分ぐらい様子をみてからお帰りいただくようにしています。