世界初の脳腫瘍ウイルス療法薬デリタクト、悪性神経膠腫の適応で承認
2021/07/09
文:がん+編集部
世界初の脳腫瘍ウイルス療法薬テセルパツレブ(製品名:デリタクト/開発コードG47Δ)が、悪性神経膠腫の適応で承認されました。
全ての固形がんに同じメカニズムで作用、脳腫瘍以外のがんへの適応拡大にも期待
東京大学医科学研究所は6月10日、第三世代のがん治療用ヘルペスウイルス「テセルパツレブ」が、悪性神経膠腫を適応症とした再生医療等製品として承認されることを発表しました。
がんウイルス療法は、がん細胞だけで増えることができるように改変されたウイルスを感染させ、ウイルスが増殖する過程でがん細胞を死滅させる治療法です。増殖したウイルスはさらに周囲に散らばることで、再びがん細胞に感染し、増殖と破壊を繰り返すことでがん細胞を攻撃します。正常な細胞では増殖することができないように改変されているため、正常細胞が傷つくことはありません。
テセルパツレブは、口唇に水疱ができる口唇ヘルペスの原因ウイルスとして知られている単純ヘルペスウイルス1型の3つのウイルス遺伝子を改変して作られた、世界初の第三世代のがん治療用遺伝子組換えヘルペスウイルスです。
3つのウイルス遺伝子を改変したことで、既存のがん治療用ウイルスに比べて安全性と治療効果が格段に高くなっています。また、テセルパツレブが破壊したがん細胞とともに免疫に排除される過程で、破壊されたがん細胞が抗原となり、免疫細胞ががん細胞を攻撃するようになるため、テセルパツレブが投与された部位だけではなく、遠隔のがんに対しても治療効果が期待できるという大きな特徴があります。さらに、テセルパツレブは、がんの根治を阻むとされるがん幹細胞も効率よく破壊することがわかっています。
テセルパツレブの開発は、発明から実用化まで一貫してアカデミア主導で実施されており、臨床開発は全て東京大学で実施されました。テセルパツレブは、日本で初めて承認されるウイルス療法薬で、世界で初めて承認された脳腫瘍に対するウイルス療法薬です。全ての固形がんに同じメカニズムで同じく作用することから、今後脳腫瘍以外のがんにも適応が拡がることが期待されます。