がん細胞の影響で、正常細胞が「がん組織に適応した状態へ変化する過程」の可視化に成功

文:がん+編集部

 がん細胞によって、周囲の正常細胞が、がん組織に適応した状態へ変化する様子を観察する技術が開発されました。発がん性物質によるがん化の促進、薬剤によるがん細胞の抑制などを画像解析することが可能になり、定量的に評価することができるため、がん悪性化を抑制する薬剤スクリーニングへの応用が期待されます。

がん悪性化を抑制する薬剤のスクリーニングに応用できる可能性

 広島大学は7月2日、がん周辺に存在する正常な細胞が、がん細胞の影響でがん組織に適応した状態へ変化していく過程を可視化する技術の開発に成功したことを発表しました。同大学院統合生命科学研究科基礎生物学プログラムの菊池裕教授、高橋治子助教らの研究グループによるものです。

 がん組織は、がん細胞だけではなく血管や免疫細胞などさまざまな細胞が混在しています。さまざまな細胞のなかの1つが線維芽細胞で、がん細胞の成長や浸潤を助けることが知られていました。

 研究グループは、がん細胞と周辺の線維芽細胞を3次元的に培養できるシステムを新たに開発。がん細胞により、周囲の細胞ががん組織にみられる状態へと変化する様子を可視化することに成功しました。線維芽細胞の変化に応じてがん細胞が活性化し、浸潤していく様子が観察されました。

 また、この培養システムと画像処理技術を組み合わせることで、細胞特性の微量な変化を定量化することにも成功。発がん性物質や薬剤をこのシステムに添加することで、その効果を評価することが可能になり、がん悪性化を抑制する薬剤のスクリーニングに応用できる可能性があります。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「今回開発したディスクに線維芽細胞以外の正常細胞を加えて共培養することにより、他の細胞ががん組織内でどのように変化するか観察したり、がんと周辺細胞との相互作用を抑制して、がんの悪性化を防ぐ効果が期待できる薬剤のスクリーニングに利用することが期待されます」