抗がん剤耐性の原因を解明、がん細胞が分泌する物質にかかわるメカニズム

文:がん+編集部

 がん細胞が分泌する物質にかかわるメカニズムが、抗がん剤の薬剤耐性の原因となっていることがわかりました。この物質を標的とすることで、薬剤耐性が克服できる可能性があります。

がん細胞が分泌するエクソソーム中「miRNA-1246」、治療標的または治療耐性マーカーとしての応用が期待

 北海道大学は7月6日、がん細胞が分泌する「エクソソーム」という物質にかかわるメカニズムにより、抗がん剤に対する耐性が誘導されるというメカニズムを解明したことを発表しました。同大学大学院歯学研究院の樋田京子教授、間石奈湖助教、同大学院歯学研究科博士課程の鳥居ちさほ氏、川本泰輔氏、北海道大学病院の樋田泰浩准教授、熊本大学の南 敬教授、東京医科大学の落谷孝広教授らの研究グループによるものです。

 ほとんどの細胞では、直径50~150nm程度の「エクソソーム」という膜小胞が分泌されます。唾液、血液、尿などの体液中で観察され、培養細胞からも分泌されます。エクソソーム内にはタンパク質やRNAなどが含まれており、細胞間の情報伝達を担っている可能性が指摘されています。

 研究グループは、転移する力が強い「高転移性がん細胞」が分泌するエクソソームに、RNA分子の1つ「マイクロRNA-1246(miRNA-1246)」が多く含まれていること、このmiRNA-1246が細胞間の情報伝達を担うサイトカイン「IL-6」を増加させることで、抗がん剤に対する耐性が誘導されることを見出しました。

 次に、抗がん剤5-FUに対して耐性をもつ高転移性がん細胞の血管内皮細胞と耐性をもたない低転移性がん細胞の血管内皮細胞を比較し、IL-6 の発現量を比較しました。また、高転移性がん細胞と低転移性がん細胞のエクソソームに含まれるmiRNA-1246を比較しました。さらに、高転移性がん細胞のエクソソームに多く含まれていたmiRNA-1246とIL-6の増加や薬剤耐性の誘導に関して解析を行いました。

 解析の結果、高転移性がん細胞は低転移性がん細胞よりIL-6の発現レベルが高く5-FUに対する薬剤耐性を示しました。また、がん患者さんの血液中のエクソソームは、健常者のエクソソームよりmiRNA-1246レベルが高いこともわかりました。

 以上のことから、がん細胞が分泌するエクソソームに含まれるmiRNA-1246によりIL-6が増加することが、抗がん剤に対する耐性メカニズムの1つとして示されました。

 研究グループは今後への期待として、次のように述べています。

 「腫瘍血管はがん細胞を養い、転移の経路となっているため、血管内皮細胞の抗がん剤耐性は治療上の大きな問題となります。がん細胞が分泌するエクソソーム中のmiRNA-1246は阻害剤の標的として、あるいは治療耐性を診断するマーカーとしての応用が期待されます」