日本人の食道がんの予後に関連する遺伝子や異常を解明

文:がん+編集部

 日本人の食道扁平上皮がん患者さんの手術切除部位を解析することで、食道がんの予後に関連する遺伝子やその変異が新たに発見されました。

新たな治療標的遺伝子やバイオマーカーの探索、がんゲノム医療の前進に期待

 東京医科歯科大学は8月17日、日本人の食道扁平上皮がん患者さんの手術切除部位について複数の解析方法より、関連する遺伝子やその変異を明らかにしたことを発表しました。同大疾患バイオリソースセンターの竹本暁特任助教、難治疾患研究所・ゲノム解析室の谷本幸介助教、稲澤譲治センター長/教授らの研究グループと、がん研究会がん研究所、がんプレシジョン医療研究センターとの共同研究によるものです。

 食道扁平上皮がんは、日本を含むアジア諸国で罹患率が高いがん種で、リンパ節に転移を起こしやすく進行した食道がんは予後不良です。近年、網羅的なゲノム解析が盛んに行われるようになり、食道がんのゲノム異常は解明されつつありますが、統合的な解析はまだ不十分で、検討が進められてきました。

 今回、研究グループは、まず日本人食道扁平上皮がんのエクソーム解析※1を行い、食道がんの予後に関連する遺伝子やその変異を新たに発見しました。さらに、網羅的な「DNAメチル化※2解析」と「遺伝子発現解析」を加えた統合的な解析を行うことで、遺伝子発現に相関を示すエピゲノム※3異常や、がんに特異的な対立遺伝子※4の発現不均衡といった異常も明らかにし、発がんのメカニズムの一端も解明しました。

 研究グループは次のように述べています。

 「発現不均衡が生じた遺伝子は、遺伝子機能の低下などの異常をきたす可能性があるため、今後、発現不均衡による食道扁平上皮がんの発症メカニズムの解明や、新たな治療標的遺伝子やバイオマーカーの探索が進展し、がんの遺伝子異常に基づいて治療方針を決定する個別化医療(がんゲノム医療)が前進すると期待できます」

※1 エクソーム解析は、ゲノムからエクソン領域を濃縮し、次世代シーケンサーにより塩基配列を決定する解析方です。DNAまたはRNAの塩基配列中で成熟したメッセンジャーRNAに残る部分がエクソン領域で、エクソンはタンパク質を合成する領域と合成しない領域で構成されています。
※2 DNAメチル化とは、DNAやタンパク質などに、「メチル基」という小さな化学構造がくっつくこと。メチル化は、エピゲノムに重要な役割を果たす化学変化の1つ。
※3 DNAの塩基そのものや、DNA二重らせんが巻き付いて存在しているタンパク質に、後天的に施される化学変化。どの遺伝子を使うまたは使わないなどを決める仕組みです。
※4 ヒトは父親と母親から1つずつ受け継いだ2つの遺伝子。