卵巣がんの薬剤耐性メカニズムにかかわる分子を発見

文:がん+編集部

 卵巣がんのプラチナ製剤に対する耐性メカニズムにかかわる分子が発見されました。

薬剤耐性にかかわる分子「G6PD」を阻害する耐性解除法を動物実験で確認

 新潟大学は8月30日、再発卵巣がんで問題となるプラチナ製剤に対する耐性化メカニズムにかかわる分子を見出したことを発表しました。同大大学院医歯学総合研究科産科婦人科学分野の榎本隆之教授、医歯学総合病院総合周産期母子医療センターの山脇芳助教らの研究グループと、国立がん研究センター研究所がん分化制御解析分野の岡本康司分野長らとの共同研究によるものです。

 卵巣がんではプラチナ製剤を中⼼とする抗がん剤治療が⾼い効果を⽰しますが、多くの患者さんで再発します。特にプラチナ製剤に対して薬剤耐性が起こった場合は、「プラチナ抵抗性再発」として有効な治療が乏しいのが現状です。

 研究グループは、卵巣がん患者さんの腹水中にあるがん細胞から作成した3次元培養細胞「スフェロイド細胞」を使った新たな解析手法を駆使し、多種類の抗がん剤に対する感受性試験を実施。その結果、プラチナ製剤への感受性が細胞によって異なることがわかりました。

 そこで、耐性が強い細胞と弱い細胞に分類し、それぞれの遺伝子発現を比較したところ、プラチナ製剤耐性のある細胞では「グルコース-6-リン酸脱⽔素酵素(G6PD)」という酵素と、それにかかわる「酸化還元酵素」が高発現していることがわかりました。このことから、これらの分子がプラチナ製剤に対する薬剤耐性メカニズムにかかわっていることが明らかになりました。

 さらに、G6PDを阻害する薬剤とプラチナ製剤の1つシスプラチンを併用することでプラチナ製剤に対する耐性が解除されることが、マウスによる動物実験で確認されました。また、過去に同大医歯学総合病院で手術を受けた卵巣がん患者さんのがん組織中のG6PDの発現を調べたところ、G6PDの発現が強いと予後が悪いという逆相関がみられました。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「プラチナ製剤に対して耐性が⽣じた卵巣がん患者にはプラチナ製剤とG6PDの阻害剤を併⽤することにより、プラチナ製剤の効果を回復させることができる可能性があります。また、患者由来のがんスフェロイド細胞の作成をすすめ、本研究で⽤いた解析⼿法を⽤いることで、他の薬剤での耐性機序に関与する分⼦も同定することができると考えられます」