口の中にできる悪性黒色腫、顎骨に浸潤するメカニズムを解明

文:がん+編集部

 骨に含まれる骨を形成する因子が、口の中にできる悪性黒色腫を「骨に浸潤しやすい形質」に変化させていることを発見。悪性黒色腫の新規診断法・治療法開発につながる可能性があります。

BMP活性化が起こす「悪循環」、顎骨へ浸潤→破骨細胞が骨破壊を増強→骨中のBMPsがさらに浸潤能を獲得

 九州大学は9月17日、骨に含まれる骨を形成する因子(BMP)が、口の中にできる悪性黒色腫を骨に浸潤しやすくするというメカニズムを動物実験で解明したことを発表しました。同大歯学研究院の自見英治郎教授、森悦秀教授、清島保教授らの研究グループによるものです。

 悪性黒色腫は皮膚がんの一種で、1年間で100万人あたり約10~20人が新たに診断されています。中でも、口腔内にできる悪性黒色腫は悪性黒色腫全体の0.2~8%と非常にまれな腫瘍です。口腔悪性黒色腫はメラニン色素を生成するメラノサイトから発生し、顎の骨に浸潤しやすく、5年生存率が8~15%と予後不良ですが、顎の骨に浸潤するメカニズムは不明でした。

 BMPにはいくつか種類があり、まとめてBMPsと複数形で呼んでいます。これまで、悪性黒色腫がBMPsを作り出すことやBMP受容体を発現することが報告されていました。研究グループは、ヒトの悪性黒色腫細胞を調べたところ、悪性黒色腫の核内で転写因子として働く「リン酸化Smad1」が確認されましたが、良性の黒子では「リン酸化Smad1」が陰性または弱陽性でした。次に、皮膚を原発とする悪性黒色腫から作られた「B16マウス悪性黒色腫細胞」とヒトの悪性黒色腫細胞をBMPsの一種「BMP2」「BMP4」「BMP7」で刺激すると、細胞の形が変化し、細胞同士の接着機能が失われ、細胞の移動や浸潤能を得ることで、上皮細胞が間葉系の細胞への変化が起こることが確認されました。さらに、 細胞と細胞の間を満たし生体組織の支持、細胞の増殖・分化・形質発現の制御にも重要な役割を果たしている体細胞の外側になる繊維状や網目状の構造体である「細胞外基質」を分解する、タンパク質を分解する酵素「マトリックメタロプロテアーゼ」の発現が過剰になっていることも確認されました。

 活性化されたBMPI型受容体(ALK3)を発現するB16細胞をマウスに移植し、ALK3が発現していないB16細胞を移植したマウスと比較したところ、骨を破壊する破骨細胞が多数誘導され、頰骨と側頭骨の突起によって形成される弓状の骨部「頬骨弓」の破壊が増強されました。このことから、BMPシグナルの活性化が、悪性黒色腫の遊走や浸潤する能力を獲得することで、顎の骨に浸潤しやすくしているが示されました。

 研究グループは、次のように述べています。

「口腔悪性黒色腫は非常に稀で予後不良な悪性腫瘍です。これまで悪性黒色腫がBMPsやBMP受容体を発現することが報告されていました。今回我々は、悪性黒色腫細胞がBMPsに応答して、遊走、浸潤能を獲得し、さらに動物モデルを用いてBMPシグナルの活性化が顎骨浸潤を亢進させることを明らかにしました。本研究成果を、悪性黒色腫の新たな診断や治療への応用に発展させたいと思います」