成人T細胞白血病リンパ腫、多段階にわたる発がんメカニズムを分子レベルで解明

文:がん+編集部

 成人T細胞白血病リンパ腫の多段階にわたる発がんメカニズムが分子レベルで解明されました。

成人T細胞白血病リンパ腫の新たな分子が治療標的となることを実験的に証明

 国立がん研究センターは9月6日、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染による成人T細胞白血病リンパ腫の多段階にわたる発がんの分子メカニズムを解明したことを発表しました。同研究センター研究所分子腫瘍学分野の古屋淳史主任研究員、斎藤優樹任意研修生、慶應義塾大学医学部内科学教室の片岡圭亮教授らの研究グループと、宮崎大学医学部内科学講座血液・糖尿病・内分泌内科学分野の下田和哉教授、京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座の小川誠司教授らの共同研究によるものです。

 成人T細胞白血病リンパ腫は、HTLV-1感染を原因とする血液がんの1つです。主な感染経路は乳児期の母乳を介した母子感染ですが、適切な保健指導により無症状のHTLV-1の持続感染者や成人T細胞白血病リンパ腫を発症する患者さんは減少傾向にあります。しかし、年間700人が新たに成人T細胞白血病リンパ腫と診断され、造血幹細胞移植以外に治癒に至る治療法がないのが現状です。

 成人T細胞白血病リンパ腫は、HTLV-1の持続感染により、CD4陽性T細胞の不死化が引き起こされます。発症に至るのはHTLV-1感染キャリアの5%以下、発症まで50~70年という年月を要します。この長い年月の間には、HTLV-1感染細胞やウイルスの増殖を抑制していたリンパ球を中心とする免疫細胞に変化が起き、1つ1つの細胞の性質が不均一な状態となっていることが想定されていましたが、これまでの研究技術では詳細に解析することができませんでした。

 研究グループは、「単一細胞マルチオミクス解析」という新しい技術により、成人T細胞白血病リンパ腫の原因ウイルスであるHTLV-1の感染細胞を正確に把握することで、従来の解析では不可能だった細胞群で発現解析を行うことに成功。その結果、新たなHTLV-1感染マーカー、成人T細胞白血病リンパ腫への進展マーカーを複数見つけ出し、新規の治療標的候補となりうることを実験的にも証明しました。

 研究グループは展望として、次のように述べています。

 「本研究が示すように、単一細胞マルチオミクス解析は、従来の解析では見出すことが技術的に不可能だった発がんメカニズムを明らかにする上で非常に有用です。研究グループは今後も単一細胞マルチオミクス解析の技術革新を図るとともに、その技術を臨床現場に応用していけるように、さらなる発がんメカニズムの全容解明を通じて、より病態に特異的で副作用の少ないと思われる治療標的の同定を目指します」